1-19 東京電力福島第一原子力発電所1号機の炉心溶融までを把握

−TRACコードによる炉心冷却に及ぼす非常用復水器の影響評価−

図1-39 解析体系の概略

図1-39 解析体系の概略

信頼性の高い事故解析を行うために、解析体系は1F1を構成する圧力容器(燃料集合体,気水分離器,ダウンカマ,ジェットポンプを含む),給水系,再循環系,主蒸気系,格納容器,ICを模擬しました。

 

図1-40 TRAC-BF1による予測結果

図1-40 TRAC-BF1による予測結果

ケース1ではIC起動時刻が遅いため、ICを起動しても炉心溶融の回避は困難ですが、ケース2の場合にはICを早期に起動するため、炉心溶融を回避できることが分かります。

 

表1-5 解析条件

ICの炉心冷却への有効性を明らかにするために、実際の事象を模擬したケース1とICの早期起動を模擬したケース2の二つの解析条件を設定しました。

表1-5 解析条件

 


東京電力福島第一原子力発電所1号機(1F1)では、東日本大震災後の津波による全交流電源喪失後、電源を必要としない非常用復水器(IC)が作動しましたが、炉内に冷却水を供給できないため、燃料棒が露出して炉心溶融が起こりました。このICの炉心冷却に対する有効性を明らかにするため、軽水炉の安全性評価解析コードとして実績のあるTRAC-BF1を使って1F1の事故解析を行い、炉心溶融に至るまでの原子炉内の状況を把握しました。

解析では、図1- 39に示すように圧力容器(燃料集合体,気水分離器,ダウンカマ,ジェットポンプを含む),給水系,再循環系,主蒸気系,格納容器,ICからなる1F 1の構成を模擬しました。

解析条件を表1-5に示します。ここで、ケース1は実際の事象を模擬した条件です。地震発生から12660秒後にICを420秒間作動させ、その後停止させました。一方、ケース2は地震発生から8400秒後までにICを起動できたと仮定し、その後も継続してICを使用した場合の条件です。

原子炉圧力,原子炉水位,燃料棒最高温度の解析結果を図1- 40に示します。ここで、原子炉水位は圧力容器下端からの水の量を基に推定した値です。燃料棒温度は燃料被覆管の外表面の温度です。

ケース1の場合、地震発生の約11000秒後には原子炉水位の低下によって燃料棒の露出が起こります。IC起動時(12660秒)には燃料棒温度は既に1000℃を超えているため、ICを起動しても炉心溶融を回避することは困難であったことが分かりました。

ケース2は、ICを早期に起動した場合です。燃料棒の加熱領域上端は露出していないことから、燃料棒が冷却できていることが分かります。これにより、地震発生後にICを早期に起動できていれば炉心溶融の回避が可能であったことが判断できました。

以上の結果は、政府事故調査委員会の事故原因等調査チームに報告され、中間報告書(平成23年12月26日)の作成に利用されました。



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