1-21 事故で発生した廃棄物の安全な管理を目指して

−汚染水処理で発生する廃棄物の長期貯蔵,処理処分に向けた取組み−

図1-43 Cs吸着塔の三次元水素拡散解析結果

図1-43 Cs吸着塔の三次元水素拡散解析結果

解析(水素発生量18.3 L/day,発熱量237 W)の結果(定常状態)、吸着塔内の水素濃度は、水素の爆発下限界 4%を十分に下回ります。

 

図1-44 廃棄物の保管期間と放射能濃度の関係

拡大図(197KB)

図1-44 廃棄物の保管期間と放射能濃度の関係

廃ゼオライトは、137Csのピット処分濃度上限値を超えていると推定され、余裕深度処分廃棄物相当と区分されますが、時間が経過すると放射能が減衰し、ピット処分廃棄物相当に区分されます。

私たちは、東京電力福島第一原子力発電所事故の復旧に向けた取組みの中で、原子炉建屋及びタービン建屋に溜まった汚染水から、放射性核種を除去する処理によって発生する廃棄物の長期貯蔵及び処理処分の見通しを明らかにするための研究開発を行っています。

汚染水中の放射性核種、特にセシウム(Cs)を除去する処理には、ゼオライト(Herscheliteなどを使用)に吸着させる吸着法、吸着剤と凝集剤により生成するスラッジに吸着させる凝集沈殿法が使用されています。私たちは、これらの処理で発生する廃ゼオライト,廃スラッジなどを長期間安全に貯蔵する見通しを得るために必要な水素発生量,貯蔵容器耐久性などに関するデータを取得しています。また、廃棄物の処理処分の見通しを得るため、廃棄体化候補技術,廃棄体の処分区分などに関する検討を実施しています。

廃ゼオライトが充てんされた吸着塔は、Cs吸着装置から切り離され、水を抜いた状態で保管されます。しかし、ゼオライトに吸着した水分や吸着塔内に残留した水が放射線分解して水素が発生することが懸念されています。そこで、保管中に発生する水素の挙動をシミュレーションしました(図1- 43)。ここでは、ゼオライトは乾燥状態で均一な水素発生、発熱分布であると仮定しています。ゼオライトの発熱や水素発生に伴う吸着塔内のガス密度変化に起因する浮力効果により、水出口管の開口部から空気が吸着塔底部にゆっくりと流入し、水素は吸着塔上部に接続された水入口管,ベント管より排出される熱流動挙動を解析的に明らかにしました。これにより、吸着塔内の水素濃度は、水素の爆発下限界 4%を十分に下回ることが示されました。

次に廃棄物の保管期間と放射能濃度の関係を検討した結果を示します(図1- 44)。廃棄物中の放射能濃度は、汚染水中の137Cs濃度に関する東京電力株式会社の公開データを基に推定しています。二種類のCs吸着装置から発生する廃ゼオライトは、いずれも137Csのピット処分濃度上限値を超えており、余裕深度処分相当と区分されます。しかし、時間の経過に伴って放射能が減衰するため、貯蔵期間を考慮することによりピット処分相当に処分区分が変わる可能性があります。今後、安全で合理的な廃棄物の処理処分を行っていくためには、貯蔵期間,放射性核種の種類・濃度,化学成分,コストなどについて総合的に評価していくことが重要になります。


●参考文献
中村博文, 汚染水処理に伴い発生する廃棄物の処理処分へのアプローチ, 環境技術, vol.41, no.6, 2012, p.365-370.


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