1-4 事故起源の放射性核種はどこまで拡散したのか

−CTBT国際監視ネットワークによる大気中の人工放射性核種の測定−

図1-9 粒子状放射性核種を検出したIMS観測所の132Te,131I,137Cs及び全核種濃度の比較

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図1-9 粒子状放射性核種を検出したIMS観測所の132Te,131I,137Cs及び全核種濃度の比較

図は全核種濃度順に各観測所のデータを並べています。我が国以外では北米やロシアの濃度が高く、赤道付近や南半球では濃度が低いことが分かります。高崎市では、この3核種の他に140Baや95Nb等13核種が検出されました。

包括的核実験禁止条約(CTBT)はあらゆる空間における核実験を禁止するもので、まだ発効していませんが、核実験を監視する体制として世界中に「CTBT国際監視ネットワーク(IMS)」が整備され、暫定的な運用がなされています。IMS監視施設には、地震波170箇所,放射性核種80箇所(粒子観測が基本、うち40箇所では希ガス観測も実施),水中音波11箇所,微気圧振動60箇所と、放射性核種用公認実験施設16箇所を加えた合計337箇所があり、このうちの約80%が整備を終えて稼働中です。我が国では、既に原子力機構が群馬県(高崎市)と沖縄県(恩納村)に放射性核種観測所を設置し、監視を続けています。

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所(1F )事故では、大量の人工放射性核種が環境中に放出され、そのうち大気中に放出されたものはIMSの放射性核種観測所でも検出されました。事故で放出された粒子状放射性核種を含む放射性雲は、1Fから直線距離で約210 kmの高崎観測所へ3月15日午後に初めて到達しました。一方、放射性雲の一部は偏西風に乗って東回りに拡散し、北米大陸やユーラシア大陸の観測所でも検出され始めました。最終的に、粒子状放射性核種は運用中の63箇所の観測所のうち、北半球の全観測所と南半球の2観測所の合計39箇所の観測所で検出されました。図1-9は、それぞれの観測所で検出された代表的核種の132Te,131I及び137Csと全核種の濃度について、検出開始から検出の沈静化した9月末までの積算値の比較です。濃度の積算値自体に意味はありませんが、各観測所への拡散の傾向を見る目安として、あえてこのように表現しました。同様に、希ガス(放射性キセノン)も北半球を東周りに拡散し、運用中の27箇所のうち北半球のすべての観測所と南半球のオーストラリアの1観測所の合計18箇所で検出されました。

このように、IMS放射性核種観測所のネットワークにより、北半球に加えて南半球の一部に至るまでの地球規模での放射能の拡散状況が明らかとなりました。IMSは本来の役割とは別に、1F事故における放射性核種の測定においても、大きな役割を果たしました。

本研究は、公益財団法人日本国際問題研究所からの受託研究「CTBT国内検証体制の確立・運用(放射性核種データの評価)」の成果の一部です。



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