4-1 ITER超伝導コイルの製作に向けて

−世界をリードするトロイダル磁場コイル用超伝導導体の調達進展−

図4-2 ITER超伝導コイル・システム

図4-2 ITER超伝導コイル・システム

18個のTFコイル,6個のCSコイル及び6個のPFコイルから構成されています。

 

図4-3 TFコイルの構造と超伝導導体

図4-3 TFコイルの構造と超伝導導体

円形ステンレス製ジャケットの中に直径0.82 mmの超伝導素線約1000本を撚り合わせた超伝導撚線を入れた超伝導導体はラジアルプレートの溝に嵌め込まれます。

 

図4-4 量産された超伝導素線の臨界電流値(Ic)のヒストグラム

図4-4 量産された超伝導素線の臨界電流値(Ic)のヒストグラム

この場合のIcとは、磁場12 T,温度4.2 Kにおいて、超伝導状態を保持しながら素線に流せる最大の電流値です。

 

図4-5 完成した長さ760 mの超伝導導体

図4-5 完成した長さ760 mの超伝導導体

直径4 mに巻かれています。

日本,欧州,米国,ロシア,韓国,中国,インドが協力して開発を進めているITERでは、高温のプラズマを閉じ込め、制御するために10 T以上の高い磁場が必要となります。これには巨大な超伝導コイルを使用します(図4-2)。プラズマ閉じ込めの磁場を発生させるトロイダル磁場(TF)コイルは、重さ約300 tの世界最大の超伝導コイルです(図4-3)。日本はTFコイル9個、全体の1/4のTF導体(NbSn導体)33本の調達を担当し、2009年3月から世界に先駆けて、TF導体の製造を始めました。

TF導体は、図4-3のように、直径0.82 mmの超伝導NbSn素線約1000本を撚り合わせた超伝導撚線を、突合せ溶接により760 mの長さに長尺化された円形ステンレス製保護管(ジャケット)の中に引き込みます。その後、圧縮成型装置の4個のローラにより、所定の外径(43.7 mm)に、1回で圧縮成型を行います。NbSn素線はこれまでにない大量の約110 tを製作する予定ですが、その内の約80%,約90 tが完成しました。導体は高い品質を保つため、ISO規格に適合した品質保証計画の下で製作しています。素線は超伝導特性にばらつきが生じることが予想されたことから、統計的プロセス管理(Statistical Process Control:SPC)を行いながら、製作しています。SPCは、製作した素線のキーとなる管理項目(臨界電流値(Ic),ヒステリシス損失残留抵抗比,素線外径など)を統計的に管理し、性能や製作プロセスの異常を早期に発見することや、仕様値に対する逸脱の可能性を評価することにより、性能のバラツキを低減する管理方法です。これまでに完成した素線のIc値の分布はガウス分布に近くなり、その数量のヒストグラムを図4-4に示します。また、標準偏差は平均値233 Aに対して、約3%の6.7 Aであり、SPCを含めた品質保証計画が効を奏したといえます。図4-5は完成した実機用超伝導導体の写真で、毎月1本のペースで製造を行い、これまでに完成した超伝導導体は、日本分担分の約80%に相当する26本となりました。他極はある程度の量の超伝導素線を製作していますが、導体製作をやっと開始した状況です。



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