1-10 福島県内における住民の被ばく線量評価

−汚染の地域差と生活行動時間の個人差をどうやって評価に取り入れるか−

図1-20 個人線量の実測値と評価値の比較

図1-20 個人線量の実測値と評価値の比較

汚染の地域差と生活習慣の個人差を反映して、福島市内の屋内作業者と屋外作業者の被ばく線量を評価しました。個人線量の実測値と評価値を比較したところ、両者は良く一致しており、評価手法の妥当性を検証することができました。

 

図1-21 汚染発生後1年間での実効線量の推計値

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図1-21 汚染発生後1年間での実効線量の推計値

避難区域及び計画的避難区域に含まれる多くの自治体において、汚染発生からの1年間で住民が受けた被ばく線量の推計値は1〜10 mSv程度でした。遅れて避難した浪江町と飯舘村では、それぞれ7.6〜48 mSv及び8.3〜22 mSvという推計結果でした。

東京電力福島第一原子力発電所 (1F) 事故によって、広い範囲で放射性物質による汚染が発生しました。事故の影響を受けた地域では多くの方々が生活を継続しており、日常生活を通じて放射線を被ばくする状況となっています。このような状況においては、住民の被ばくを適切に管理する必要があり、広範囲かつ多様な人々の被ばく状況を把握するための線量評価手法の開発が喫緊の課題となっています。

一般に、日常生活で受ける被ばく線量は、(1)放射性核種濃度データや放射線量率データ(2)被ばくに関連する生活習慣データを使って評価します。これらのデータには、平均値を使うこともできるのですが、その場合、一人一人の被ばく線量がどのくらい違うのかを把握することはできません。そこで、私たちは、汚染の程度や生活習慣の違いによって、同じ地域で暮らす住民の線量にどのくらいの違いが生じるのかを評価する手法を開発しました。

開発にあたっては、第一に、自宅の放射線量率を測定しました。第二に、外部被ばくに関連する生活習慣として、多様な職種の方々の協力のもと、屋内外における生活行動時間を調査しました。そして、線量率データと生活行動時間データの分布をそれぞれ定めて、これら二つの分布を組み合わせることで住民の線量を分布として評価しました。協力者には個人線量計の装着を依頼し、外部被ばくによる個人線量データも併せて整備しました。評価結果と個人線量データとを比較して評価手法の妥当性を検証することができました(図1-20)。

さらに、開発した評価手法を用いて、避難区域と計画的避難区域からの避難者が、1F事故発生後の1年間で受けた線量の範囲を評価しました。この評価では、複数施設への避難とその後の生活を通じて受けた被ばくが考慮されています。図1-21に、屋外作業者に対する線量評価の結果を示します。これらの区域に含まれる自治体の多くでは、屋外作業者に対する汚染発生後1年間での実効線量の範囲が1〜10 mSvとなりました。汚染の発生後、遅れて避難した浪江町と飯舘村では、他の自治体よりも線量が高く、それぞれ7.6〜48 mSv及び8.3〜22 mSvと評価されました。

本研究では、汚染の地域差と生活習慣の個人差を反映することで、科学的根拠に基づいて住民の被ばく線量の範囲を定量的に示すことができました。



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