1-18 福島事故の原因を探るにあたってのポイントは何か

−福島事故に関する5つの事故調査報告書のレビュー−

図1-39 1F3及び1F4非常用ガス処理系(SGTS)フィルタトレイン等に関する線量測定結果(単位:mSv/h)

拡大図(210KB)

図1-39 1F3及び1F4非常用ガス処理系(SGTS)フィルタトレイン等に関する線量測定結果(単位:mSv/h)
(東京電力事故調査報告書の図を加工)

1F4原子炉建屋には、SGTSフィルタの線量測定結果から、1F3ベントラインから原子炉建屋に水素が流入したと推察されています。一方、1F3原子炉建屋に関して、SGTSフィルタの線量測定結果や図中の②の弁の前後の線量の違いから、ベントラインからの水素流入の可能性は低いとされていますが、1F3の中央部のフィルタの線量が最も高いこと、格納容器の圧力が設計圧を越えている時期はさほど長くはないことなどの状況を踏まえると、1F3建屋へのベントに伴う水素流入の可能性についても十分な検討が必要と考えられます。

2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故に関して、東京電力,政府,国会,民間有識者が独立した事故調査委員会を設置しそれぞれの立場から独自の視点で調査・分析を行い、報告書にまとめて公表しました。また、経済産業省原子力安全・保安院(当時)は、今後の原子力発電所の安全性向上に資するために、事故原因の分析を行い、その結果を報告書としてまとめました。

本検討では、今後の事故状況の調査や新たな規制制度の構築に役立つ情報として整理することを目的に、これら5つの報告書を技術的側面からレビューし、それぞれの調査結果における見解の相違等について分析するとともに、これらの報告書で十分に議論されていない課題等を明らかにしました。見解の相違は、非常用ディーゼル発電機が停止した理由,1F1(1号機〜4号機を1F1〜1F4)非常用復水器を手動停止した理由,1F1の原子炉減圧,格納容器の健全性とベント操作,水素の流入経路等に見られることを示しました。例えば、1F1及び1F3原子炉建屋の水素爆発は、格納容器からの直接的な漏えいにより流入した水素,1F4の水素爆発は1F3格納容器のベントの際に逆流した水素によるとされています(図1-39)。しかし、1F1及び1F3では爆発の前に格納容器ベントを行っており、また、1F3の非常用ガス処理系フィルタの線量測定結果(図1-39)から、ベントガス流入の寄与についても十分な検討が必要であることを指摘しました。

また、十分な議論がなされていない課題として次の項目を明らかにしました。

(1)地震発生直後の1F1での操作に適用した運転手順書の適切性:日本原子力発電株式会社敦賀発電所1号機の手順書との比較を通して当該手順書の妥当性の検証

(2)非常用ガス処理系の弁の駆動源喪失に対する設計上の考え方:弁の駆動源喪失に対して自動開(fail open) とするのか現状維持(fail as is)とするのかという設計思想の違いに関する検討

(3)格納容器ベントラインの弁構成に関する考え方:通常時閉の弁2個と破裂板を直列に設けたのは何故かに関する検討

(4)格納容器冷却系の起動に対する考え方:1F1及び1F2と1F3で対応が異なったことに対し手順書との適合性を含めてこれら対応の正当性についての検討



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