1-3 高線量箇所でも被ばくせずに測定が可能

−無人ヘリコプターを用いた発電所近傍の放射線測定−

図1-6 無人ヘリコプターモニタリング機器

図1-6 無人ヘリコプターモニタリング機器

γ線のエネルギーを測定できるLaBr: Ce検出器の計数率とDGPSによる位置情報を同期させたデータを1秒毎に保存する装置です。現在の位置情報をリアルタイムにコンピュータに表示させることも可能です。

 

図1-7 1F周辺の線量率分布マップ

図1-7 1F周辺の線量率分布マップ

無人ヘリコプターモニタリング機器により、80 m間隔で測定し、得られたデータを地上1 m高さの線量率に換算しました。また、線量率は減衰補正を行い、2013年3月21日現在の値に換算しました。本マップには天然放射線の影響が含まれます。

東京電力福島第一原子力発電所 (1F) 事故以来、迅速に広域の放射線を測定できる方法が求められています。私たちは、事故の影響を把握するため、航空機 (有人のヘリコプター) を用いた放射線のモニタリングを実施し、日本全域の放射線分布について明らかにしました。一方、発電所から3 km圏内については、飛行禁止区域となっており、航空機によるモニタリングは実施されていませんでした。そこで、今回、プログラム飛行が可能な、自律型の無人ヘリコプターを用いた放射線モニタリングシステムにより、1Fから近傍の放射線モニタリングを実施し、放射線分布マップを作成しました。

自律型の無人ヘリコプターは、農薬散布に広く使用されている無人ヘリコプターをベースとしたヤマハ発動機株式会社製のR-MAX G1を採用しました(図1-6)。搭載する放射線モニタリングシステムは、私たちで開発しました。検出器には、γ線のエネルギー測定が可能な、LaBr: Ceシンチレータを用いました。検出器からの信号は、DGPS (Differential Global Positioning System) による位置情報とともに、1秒毎に保存できます。取得したデータはあらかじめ設定したパラメータにより、 地上1 m高さにおける線量率に換算します。換算したデータを、市販のGIS (Geographic Information System: 地理情報システム) ソフトウェアにより、マップ化しました。無人ヘリコプターは、測定対象地域を80 mメッシュの櫛形にプラン設定し、対地高度80 m、速度8 m/sでフライトしました。測定結果は、地上におけるサーベイメータ測定結果と比較すると、おおむね一致することが分かりました。

1F周辺の線量率分布マップを図1-7に示します。1Fを起点として、南方向と西方向に比較的放射線の高いエリアが広がっていることが分かります。西方向のエリアについて、二つのエリアに分かれていることが確認できます。また、北西方向にも、線量率の高い帯状のエリアがあることが分かります。このような、分布となる原因は、事故時の気象状況や地形の状況によるものと推定されます。また、本分布情報をもとに、放射性物質の拡散シミュレーションと比較することにより、事故の状況に関する新たな知見が得られることが期待できます。

本マップは、原子力規制庁のホームページに一般公開されています(http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat03/pdf04/5-1-2.pdf)。今後とも、迅速に広範囲の放射線を測定し、可視化する方法について研究を進めていきます。

本研究は、文部科学省からの受託研究「福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の長期的影響把握手法の確立」の成果の一部です。



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