3-6 地下での廃棄体周辺の環境・材料の長期変化を予測する

−地球化学環境の変遷に着目した緩衝材及び周辺岩盤の長期挙動評価手法開発−

図3-17 開発した熱−水−応力−化学連成解析モデルの概念

図3-17 開発した熱−水−応力−化学連成解析モデルの概念

人工バリアの定置後は、ガラス固化体からの放熱,人工バリア内への地下水の浸潤と物質移行,緩衝材の膨潤変形,間隙水の地球化学反応などが相互に影響し合う複雑な場が形成されることが予想されます。

 

図3-18 解析対象

図3-18 解析対象

は図3-20の出力点です。処分システムは、廃棄体横置き方式としました。

 

図3-19 人工バリア及び周辺岩盤の変遷の例

図3-19 人工バリア及び周辺岩盤の変遷の例

処分システムは深度450 mの堆積岩中に設置するものと仮定しました。

 

図3-20 緩衝材中スメクタイトのイオン交換サイト濃度の変遷の例

図3-20 緩衝材中スメクタイトのイオン交換サイト濃度の変遷の例

Zはイオン交換基です。約10年でNa,Ca濃度がそれぞれ初期の約1/2,4倍に、1000年後に初期濃度程度まで回復することが分かりました。

高レベル放射性廃棄物の地層処分の信頼性を高めていくためには、廃棄体を取り囲む人工バリア及びその周辺岩盤で生じると考えられる物理的,化学的なプロセスを明らかにすることが必要です。人工バリアを構成する金属性のオーバーパックや粘土からなる緩衝材などの実際の材料を用いた実験では、地層処分で対象とする数100年を超える長期間を直接考慮できないことから、コンピュータを利用した数値実験によるアプローチが有効です。

そこで、人工バリア及びその周辺岩盤で生じる熱,水,応力,化学相互の影響を考慮した挙動 (連成挙動) を評価するためのモデルを開発し (図3-17)、ガラス固化体の放熱と人工バリア内への地下水の浸潤に伴う化学的な環境変化の予測を行いました(図3-18)。

その結果、人工バリア内は約20年までの間に最高温度に達し、緩衝材とオーバーパックとの境界部は約95 ℃となり、1000年後に人工バリア及び周辺岩盤が約50 ℃になることや、坑道のコンクリート部分を中心にpHが高い領域が広がるものの、1000年後までに初期のpH程度に低下することが予測されました(図3-19)。また、コンクリートから溶け出したCaが緩衝材中へ移行することや(図3-20)、塩水が含まれる地下水中では、オーバーパック周辺の緩衝材中で析出する硫酸塩が長期的には再び地下水中に溶解することなどが予測されました。これらの結果は、これまで地層処分の安全性を評価するために想定してきた現象や過程と整合するものでした。開発したモデルを用いて地下深部の地下水のpHなどの化学的な環境を予測することにより、人工バリア中でのオーバーパックの腐食の程度などを予測できるようになります。

本研究は、経済産業省からの受託研究「処分システム化学影響評価高度化開発」の成果の一部です。



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