5-7 耐熱光学センサで原子炉配管の地震時健全性を探る

−超短パルスレーザ加工技術の保全学への応用−

図5-15 超短パルスレーザ加工による格子点

図5-15 超短パルスレーザ加工による格子点

直径8 μmの光ファイバコアに超短パルスレーザ加工により1.6 μm間隔で整然と並んだ格子点です。800個並んだ格子点は反射型の回折格子として機能します。

 

図5-16 耐熱FBGセンサによる振動測定

図5-16 耐熱FBGセンサによる振動測定

高速炉用クロム鋼材片にセラミック系接着剤で耐熱FBGセンサを接着しました。400 ℃において振動計測に成功しました。

運転中高温となる原子炉冷却配管は、熱膨張による応力に加えて地震による外力による亀裂破断の恐れがあるため状態監視が必要です。しかしながら、市販のセンサは、量産には適していますが高温では使えません。これまで、光ファイバコア内部に周期的な屈折率構造を描き込むFiber Bragg Grating (FBG) と呼ぶセンサを開発しました。コア内部の周期的な屈折率の変化は、周期に対応する特定の波長の光を反射します。光ファイバを配管に密着して沿わせることにより、配管の変形がコアの周期的な屈折率構造を歪ませ、反射するレーザ光の中心波長を変化させます。この手法により原子炉配管の状態監視が可能となるのです。

石英ガラスに赤外光のパルスレーザ光を集光すると、集光位置近傍がピコ秒以下の瞬間に融点を超える温度まで過熱されて急激に膨張し、その後冷却により、集光点の中心部分が低密度に、その周囲が高密度に変化します。これは密度分布を刻み付ける「光の彫刻刀」といえます。この密度分布は、ガラスを軟化点まで再加熱しない限り保持されます。しかしながら、紫外光レーザではガラスの表層で吸収されてしまい、また、ナノ秒レーザではパルス時間が長すぎて熱による損傷が生じます。超短パルスレーザ加工によりファイバのコアに沿って規則正しく整列したドット列だけが、間隔に応じた波長を反射する回折格子として働くのです(図5-15)。

また、このセンサを原子炉配管に実装するために最も重要な技術が、センサ部分の耐熱繊維編み込みによる強度向上です。ここでは、耐熱性が高く放射線照射に強い材料として炭化ケイ素繊維を採用し、光ファイバの編み込みに成功しました。これにより、センサの実質的な強度が向上し、取扱いが格段に容易になりました。接着に際しては、耐熱エポキシ系とセラミック系を温度に応じて使い分けることで対応します。温度センサとしては常温から600 ℃まで優れた直線性を示します。また、歪センサとしては400 ℃において、地震を模擬した配管の減衰振動の計測に成功しました(図5-16)。

我が国には、高度経済成長期を支えた原子力発電所や石油化学プラントなどの生産設備が高経年化による保守保全の時期を迎えています。近く発生が確実視されている南海トラフ沖での巨大地震に備えて、配管の脆弱部分を診断しておくことは、施設管理者の義務といえるでしょう。



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