5-8 燃料電池を高効率化する「助触媒」の役割を解明

−酸化セリウムが白金酸化物形成の抑制に寄与−

図5-17 白金及び酸化セリウムの酸化状態

拡大図(143KB)

図5-17 白金及び酸化セリウムの酸化状態

(a)従来の白金触媒、(b)Pt-CeOxにおける白金・セリウムの酸化状態を示しています。Pt-CeOxでは、従来の白金触媒と比べて、白金表面酸化が著しく抑制されています。青はプラス方向、赤はマイナス方向へのスキャンを表します。

 

図5-18 Pt-CeOx表面上における酸素還元反応の模式図

図5-18 Pt-CeOx表面上における酸素還元反応の模式図

酸化セリウム/白金界面の形成により白金表面の酸化が抑制され、白金本来の高い酸素還元反応活性が維持されることを明らかにしました。

燃料電池のひとつである固体高分子型燃料電池(PEFC)は、100 ℃以下で動作し、小型化が容易でありかつ排出物が水だけという特徴をもった、クリーンかつコンパクトな発電システムです。これらの特徴を生かして、PEFCは自動車,モバイル電子機器への搭載が期待されています。しかしながら、PEFCでは電極材料に高価な白金を多く使用することが普及の障壁となっており、白金使用量の低減方法の検討が広く行われています。そのひとつとして、出力が理論値に近い、高性能な電極材料の開発の研究が行われています。

これまで、独立行政法人物質・材料研究機構(物材機構)ナノ材料科学環境拠点は、従来の白金触媒よりも高い酸素還元反応活性を示す、白金-酸化セリウムナノ複合体(Pt-CeOx)触媒の研究を行い、合成法を確立しました。今回、私たちは、物材機構と共同で、Pt-CeOx中の助触媒である酸化セリウムの役割を明らかにする実験を行い、酸素還元反応の高活性化のメカニズムを明らかにしました。

実験は大型放射光施設SPring-8で行い、X線吸収微細構造法(XAFS)を用い、酸素還元反応が起こっている状態での、白金触媒,Pt-CeOx触媒中の白金及びセリウム原子それぞれの価数を調べました。その結果、白金触媒では、酸素還元反応が起こる条件付近で、白金表面の一部で酸化物が形成される一方、Pt-CeOx触媒では、白金表面の酸化物形成が著しく抑制されているとともに、本来白金が酸化される条件で、Ce3+が減少しCe4+が増加することを明らかにしました(図5-17(b))。この結果から、Pt-CeOx触媒では、白金とセリウムとの界面で電荷のやり取りが起き、酸化セリウム中のCe3+成分が白金の身代わりに酸化される結果、白金の酸化が抑制されることが分かりました(図5-18)。これまでの研究から、白金表面上の酸化物が酸素還元反応の活性を低下させることが分かっています。したがって、Pt-CeOx触媒では、酸化セリウム層により白金酸化物の形成が抑制されることにより、白金本来の触媒活性が発揮されることが結論づけられました。



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