1-15 圧力容器内燃料デブリの状態推定

−熱力学平衡計算に基づき燃料デブリの化学形を評価する−

図1-32 UO2-Zr-Fe系における温度−酸素分圧状態図

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図1-32 UO-Zr-Fe系における温度−酸素分圧状態図

BWR炉心が溶融した場合、温度と酸素分圧に応じて燃料デブリの化学形は変化します。一般に、事故直後は酸素分圧が低く、事故進展とともに酸素分圧と温度が徐々に上昇していくと考えられます。

 

図1-33 溶融・崩落後の圧力容器内での燃料デブリの生成状況

図1-33 溶融・崩落後の圧力容器内での燃料デブリの生成状況

1F2を対象とした既出の事故進展解析結果(左側)を整理して溶融・崩落後の材料組成と温度を算出し、これを入力条件として各領域での相状態を計算しました(右側)。

東京電力福島第一原子力発電所(1F)の炉内からの燃料デブリの取出しにおいては、燃料デブリの物性がどのようなものかを把握し、最適な工法及び工具を選択する必要があります。材料の物性は、その酸化状態(酸化物か金属か)、あるいはその組成によって異なるため、燃料デブリの化学形を推定することが重要です。しかし、1Fの炉内に関する情報はこれまで十分には得られていません。本研究では、過酷事故時に想定される環境条件(温度,酸素分圧及び材料組成)を様々に設定して熱力学平衡計算を行うことにより、取出し時に遭遇することが予想される燃料デブリの化学形を推定しました。

はじめに簡易評価として、圧力容器内炉心部の主要材料(UO, Zr, Fe)の組成を用いて、事故時に炉内環境(温度と酸素分圧)が変化したときに燃料デブリの化学形がどう変化するかを推定しました(図1-32)。その結果、酸素分圧の低い条件では金属のジルコニウム(Zr)がUOや鉄(Fe)と反応し、酸素分圧が高くなるとZr,Fe,UOの順に酸化が進むことが分かりました。Zrが全量酸化されずに部分的に金属になっている場合、それらはZr(O)やFe(Zr,U)のような合金相を形成する可能性が高いと考えられます。また、温度の上昇とともにZr及びFeがUO中に溶け込み、(U,Zr)Oや(U,Zr,Fe)Oのような酸化物の固溶体になりやすいと考えられます。

次に、炉心の溶融・崩落により圧力容器内の材料組成に空間的な偏りが生じた場合に、燃料デブリの化学形がどう変わるかについても検討しました。石川らが報告した1F2号機(1F2)の事故進展解析結果(日本原子力学会2012年秋の大会)に基づいて溶融・崩落後の圧力容器内の材料組成を求め、これを入力条件として熱力学平衡計算を実施しました。図1-33は、1F2を対象に、圧力容器内の各部位における燃料デブリの化学形を推定した一例です。その結果、炉心中央では主に(U,Zr)Oのような酸化物が生成すること、炉心支持板付近では金属成分の割合が大きくZr(O)やFe(Zr,U)に代表される合金相が生成しやすくなることが示唆され、簡易評価と同様の傾向が得られることが分かりました。ただし、圧力容器の損傷が激しい場合は格納容器床面のコンクリートとの反応も考慮する必要があります。

従来取得してきた酸化物の物性データのほかに、今後は合金相についても硬さや破壊靱性等のデータを取得し、燃料デブリ取出しにおける工法・工具選定に資するデータを整備していく予定です。



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