1-19 汚染水処理後のセシウム吸着材を安全に保管する

−吸着材の性状を推定し、水素発生と容器腐食を評価する−

図1-39 残留水で水出口管が閉塞した吸着塔内の温度,水素濃度の定常解析例

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図1-39 残留水で水出口管が閉塞した吸着塔内の温度,水素濃度の定常解析例

設定条件(崩壊熱504 W, 水位24 cm, 水素発生率20.5L/日,底面吸収線量率755 Gy/h)での解析結果です。残留水で水出口管が閉塞した場合でも、水入口管からの空気流入とプラグ等からの水素/空気混合ガスの流出により、吸着塔内の最高温度は自己着火温度(500〜571 ℃)を十分に下回り、水素濃度も爆発下限界(4%)を下回ることが分かりました。また、容器底部の水温は47 ℃と評価されました。

 

図1-40 ステンレス鋼の局部腐食発生電位とCl-濃度の関係

図1-40 ステンレス鋼の局部腐食発生電位とCl-濃度の関係

海水中で吸着材と接触させたステンレス鋼に対する電気化学的試験の結果です。Cl-濃度が増大すると局部腐食発生電位が低下し、自然浸漬電位を下回る領域では、局部腐食発生リスクが存在すると評価することができます。しかし、吸着塔容器底部の水温を60 ℃以下,吸収線量率を755 Gy/hとすれば、海水相当の約20000 ppmのCl-濃度では、直ちに腐食は発生しないと考えられます。

東京電力福島第一原子力発電所事故の汚染水処理では、セシウム(Cs)除去性能が高い鉱物系吸着材(Herschelite等)をステンレス鋼製容器に充てんした吸着塔が使用されています。使用済みの吸着塔は強い放射線を出すため、遮へい体に入れて一時保管されています(図1-39(a))。初期の吸着塔は海水を含む汚染水を処理しており、長期保管を達成するためには、水の放射線分解による水素発生や容器材料の腐食評価を早急に行う必要があります。

吸着材の性状として、Cs吸着係数,熱伝導率,水素発生G値等を取得し、Csが吸着塔内に均一に吸着した時の崩壊熱,吸収線量率,水素発生率等の評価条件を設定しました。これを基に、吸着塔内の温度と水素濃度を解析した結果の例を図1-39(b)と(c)に示します。吸着塔内の最高温度は211 ℃で、水素の自己着火温度(500〜571 ℃)を十分下回ること、この温度分布での水素濃度は、1.6%以下(爆発下限界は4%)となりました。ベント管,プラグ,水入口管を開放した状態であれば、水入口管から空気が流入し、プラグ等から水素と空気の混合ガスが流出するため、塔内水素濃度の上昇が抑えられることが分かりました。

局部腐食発生の評価には、電気化学的手法を用います。海水中で吸着材と接触させ測定したステンレス鋼の局部腐食発生電位と塩化物イオン(Cl-)濃度の関係を図1-40に示します。Cl-濃度が増大すると、局部腐食発生電位が低下し、自然浸漬電位を下回ると腐食が発生する条件を満足しますが、図1-40から吸着塔容器底部の水温60 ℃以下、吸収線量率755 Gy/h(図1-39の解析結果と設定条件)では、海水相当の約20000 ppmのCl-濃度では直ちに腐食は発生しないと考えられます。

本研究は、経済産業省からの受託事業「平成25年度発電用原子炉等廃炉・安全技術基盤整備(事故廃棄物処理・処分概念構築に係る技術検討調査)」の成果を含みます。



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