2-6 再処理施設の重大事故評価に必要なデータを取得

−蒸発乾固事故における放射性物質の気相移行データの取得と評価−

図2-14 移行割合測定試験装置の概要

図2-14 移行割合測定試験装置の概要

模擬廃液試料を300 ℃まで加熱し、放出されたガスを冷却器で凝縮させて凝縮液を回収します。凝縮液を分析することで、各元素の気相への移行割合データを取得しました。

 

図2-15 試料温度の経時変化

図2-15 試料温度の経時変化

加熱開始から70〜80分までは沸騰段階で、その後は水分が非常に少ない状態(乾固段階)になりました。 

 

図2-16 気相への移行割合の経時変化

図2-16 気相への移行割合の経時変化

沸騰段階においては、亜硝酸の存在によってRuの気相への移行割合が抑制されることを確認しました。

再処理施設内で高レベル濃縮廃液の冷却機能が喪失すると、 廃液が蒸発乾固し放射性物質が貯槽外へ放出され、配管等を経て環境中へ放出されるおそれがあります。事故時の安全性を評価するためには、気相中へ放出される放射性物質の移行挙動を定量的に把握する必要があります。

本試験では、実廃液組成を参考に安定な同位元素を利用して調製した模擬廃液を用いて加熱試験を実施し、蒸発乾固時の対象元素の移行割合を測定しました。図2-14に試験装置を示します。廃液蒸発時の蒸気流速が事故時の推定値と同程度となる加熱条件の下で模擬廃液試料を300 ℃まで加熱しました。図2-15及び図2-16は、試料温度及び廃液中の各元素の移行割合の経時変化をそれぞれ示しています。廃液中の各元素のうちルテニウム(Ru)は、沸騰段階の後半から乾固段階にかけて移行割合が急激に増大し、300 ℃まで加熱した時点での移行割合は、難揮発性元素であるセシウム(Cs)よりも3桁程大きい10−2程度となりました。この段階では廃液中の硝酸が濃縮され、この高濃度の硝酸によってRuは揮発性を有する化学形に酸化されるため、Csよりも移行割合が大きくなったものと考えられます。また、廃液沸騰段階では、廃液中の放射性物質は、沸騰気泡の廃液表面での破裂に起因して生成するミストに含有された状態で気相中に移行します。この機構に基づく移行に関しては、RuとCsで同様の移行挙動が予想されます。図2-16では、沸騰段階においてもRuはCsよりも高い移行割合を示していますが、実廃液中には、硝酸の放射線分解生成物として亜硝酸イオンが存在することを模擬するために、亜硝酸イオンを試薬として添加した場合には、Ruの移行割合はCsの値と同等になることが分かりました。この結果から、沸騰段階では、亜硝酸の存在によってRuの揮発性が抑制されることを確認しました。

今後は、気相中を移行する各元素化合物の移行挙動データの取得を進めるとともに移行解析モデルの構築を行っていきます。

本研究は、独立行政法人原子力安全基盤機構及び日本原燃株式会社との共同研究「再処理施設における放射性物質移行挙動に係る研究」の成果の一部です。



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