4-2 原子炉事故時の溶融物の挙動を明らかにする

−炉内溶融物移行蓄積シミュレーション手法の開発−

図4-5 溶融物移行挙動の推移

拡大図(431KB)

図4-5 溶融物移行挙動の推移

(a)模擬燃料集合体上端から燃料成分が持つ発熱により燃料が溶融し下方へ移行します。(b)溶融燃料が模擬炉心支持板上に堆積し、一部は制御棒案内管内部に流入します。(c)案内管を介して溶融物は下部プレナムに侵入し、下部領域に蓄積します。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故では、原子炉内でメルトダウンが発生し、溶けた燃料が原子炉圧力容器下部まで達していると言われています。今後の廃炉作業をできるだけ円滑に進めていくうえで、溶け落ちた燃料がどの程度の量でどのように分布しているかを詳細に把握することは非常に重要ですが、高い放射線量により実際に確認することは困難です。

このような場合、コンピュータシミュレーションによる予測が非常に有効です。これまで過酷事故時のコンピュータシミュレーションは行われていますが、溶融燃料の詳細な移行挙動を取り扱った例はほとんどありません。また、1Fのような沸騰水型原子炉での過酷事故は世界に例がなく、ほとんどのコンピュータシミュレーションは加圧水型原子炉を対象に行われていました。

そこで、私たちは、過酷事故時の炉内溶融物の移行挙動を詳細に再現することを目的として、新たなコンピュータシミュレーション手法の開発を行っています。原子炉内では自ら発熱するウラン燃料と発熱しない構造物の2成分が存在することから、それらの成分を区別できるようにしました。すなわち、燃料成分とその他構造物にそれぞれ異なる成分識別関数を与え、同一支配方程式の下に各成分挙動を扱えるようにしました。この際、各成分の境界すべてを別々に計算すると計算誤差が大きくなりますが、最初に全成分まとめて計算したあと、各成分について評価することにより誤差を抑えました。また、溶融燃料等の溶融物の形状の変化を効率的に計算できる手法を構築し、図4-5に示すような溶融燃料とそれ以外の構造物との複雑な相互作用を含んだ熱流動現象を扱えるようにしました。これにより、詳細な燃料の流動の取扱い、多成分の取扱いが可能になり、発熱する物質であるウラン燃料及び非発熱体である構造物(ジルカロイ,ステンレス鋼,BC)を含んだ体系での一貫したシミュレーションによって、既存のシビアアクシデント解析コードの結果を補足する情報を提供できる見通しを得ることができました。

今後は、化学反応や輻射などに関するシミュレーション機能の導入や実験データによる検証を図り、炉内溶融物の移行蓄積挙動のより正確な把握に対応する考えです。



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