4-7 白金粒子の電極触媒機能で原子価を制御する

−アクチノイドの選択的な迅速原子価調整法の開発−

図4-16 カラム電極を用いる流液系電解法

図4-16 カラム電極を用いる流液系電解法

グラッシーカーボン(GC)繊維を作用電極とするカラム電極電解法では、多孔質ガラス隔膜にGCを充てんし(上図参照)、そのGCの間隙に試料溶液を流しながら電解することにより、迅速かつ高効率に原子価を制御できます。

 

図4-17 流液系電解におけるU,Np及びPuの原子価変化

図4-17 流液系電解におけるU,Np及びPuの原子価変化

(a)GC電極と(b)白金黒付GC電極(Pt/GC)を用いた時のU,Np及びPuの電解電位ごとの原子価変化の比較です。Pt/GC電極の場合、Npを四価に調整でき、+0.15 Vの電解でU(VI)+Np(V)+Pu(III)、+0.5 Vの電解でU(VI)+Np(IV)+Pu(III)と、U,Np及びPuを異なる原子価に調整することもできます。

アクチノイド(An)元素のうち、ウラン(U),ネプツニウム(Np)及びプルトニウム(Pu)は水溶液中で三価から六価の原子価のイオンとして存在します。これらのイオンは原子価ごとに溶液中での振る舞いが大きく異なるため、その原子価状態を正確に把握し、精密に制御することが、高選択的な分離や精度の良い分析を行ううえで重要です。

私たちは、図4-16に示すような微細なグラッシーカーボン(GC)繊維を筒(カラム)状に成形して作用電極として利用するカラム電極電解法を開発してきました。この方法では、溶液を流しながら電解するため、迅速なイオンの原子価調整が可能です。Anイオンの酸化還元のうち五価(AnO+)と四価(An4+)の間の反応は、イオンの化学形の変化を伴うため、単純な酸化還元よりも反応速度が遅く、過電圧と呼ばれる過剰なエネルギーが必要なことが分かりました。また、白金を電極材とすると、白金自体が持つ触媒作用により過電圧を大幅に低減できる可能性を見いだしました。しかし、通常の白金表面での触媒反応の速度は遅く、電解に長時間を要するという課題がありました。

そこで、私たちはカラム電極に白金の電極触媒機能を付与した迅速電解法の開発を試みました。塩化白金酸を含む溶液中で、電解によりGC繊維上に白金黒と呼ばれる微粒子状の白金を析出させました。

この電極を用いてU,Np及びPuを電解還元した時の印加電位と、原子価の変化の関係を図4-17に示します。従来の(a)GC電極ではNp(X)やPu(X)の還元の過電圧が大きいため、Np(X)を還元すると一挙にNp(III)まで還元されたり、Pu(X)からPu(III)への還元が緩やかに進んだりするため、選択的な原子価調整が困難でした。一方、(b)白金黒付電極を用いれば、Np(W)を精度良く原子価調整でき、例えば+0.15 Vの電位ではU(Y)+Np(W)+Pu(III)のように、U,Np及びPuをそれぞれ異なる原子価に調整することが可能となります。

本研究の成果は、精密な原子価制御によるAn元素の高効率な分離を可能とするだけでなく、電解電気量を測定することによる原子価別の高精度な電量分析にも応用できます。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金(No.22560832)「中性領域・分散系溶液でのアクチノイドイオンの原子価変化機構の解明と制御」の成果の一部です。



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