4-8 環境試料中の濃縮ウラン粒子を選択的に検知・分析

−固体飛跡検出を前処理に用いる二次イオン質量分析法の開発−

図4-18 U粒子の(a)フィッショントラック像及び(b)アルファトラック像

図4-18 U粒子の(a)フィッショントラック像及び(b)アルファトラック像

試料中にU粒子が存在する場合には、中性子吸収による核分裂やα壊変によりこのようなトラックが固体飛跡検出器に刻まれ、顕微鏡でその像を観察することができます。

 

図4-19 試料中のU粒子の位置の特定

図4-19 試料中のU粒子の位置の特定

粒子を含むフィルムを作成し、検出器に密着させます。その後、トラックが観測された位置の情報から、試料中のU粒子の位置を特定することができます。

 

図4-20 原子力施設で採取された環境試料中のU粒子の二次イオン質量分析による同位体測定結果

図4-20 原子力施設で採取された環境試料中のU粒子の二次イオン質量分析による同位体測定結果

235Uの存在割合が9%以上のU粒子が複数検出されました。これらの粒子は、固体飛跡検出を用いない分析の場合には見逃して検出できませんでした。

原子力の平和利用のためには、核兵器開発につながるようなウラン(U)濃縮などの秘密裡の原子力活動を国際的に監視していく必要があります。私たちは、国際原子力機関(IAEA)などと連携して、世界中の原子力施設で採取された環境試料に含まれる核物質粒子の分析やそのための新規分析法の開発を行っています。IAEAでは、これらの分析結果を基に、その施設でどのような核物質がどのような目的で使われているかを調べています。

環境試料中の核物質粒子を分析するためには、まず、試料中に含まれる無数の粒子の中から核物質粒子を特定する必要があります。本研究では、固体飛跡検出器を用いてU粒子を特定する方法を開発しました。まず、粒子を有機溶剤中に懸濁させ、それを自然乾燥させることにより、粒子を含むフィルムを作成します。そのフィルムを固体飛跡検出器に密着させ、原子炉で中性子照射します。ここで、試料中にU粒子が存在する場合には、235U同位体が中性子を吸収して核分裂を起こし、その飛跡(フィッショントラック)が検出器に刻まれます。この飛跡は、顕微鏡で観察することができ(図4-18(a))、その位置から、U粒子の試料中の位置を調べることができます(図4-19)。また、中性子照射をしない場合でも、U同位体のアルファ壊変によって飛跡(アルファトラック)が検出器に刻まれますので(図4-18(b))、同様にU粒子の位置を特定できます。

一方、固体飛跡検出器に刻まれるトラック本数はUの濃縮度(235U同位体の存在割合)と強い相関があり、本数が多いほど濃縮度の高いU粒子である可能性が高くなります。すなわち、トラック本数の多いU粒子を選択的に検知することにより、濃縮度の高いU粒子を効率的に分析できます。これは、核兵器開発につながるような原子力活動を検知するうえで極めて重要です。図4-20は、ある原子力施設で採取された試料について、アルファトラック像の観察によりU粒子の位置を特定し、トラック数の多い粒子を選択して、234U及び235U同位体の存在割合を二次イオン質量分析法により分析した例です。この結果では、従来の固体飛跡検出を用いない方法では見逃していた9%以上の濃縮度を有するU粒子を複数個見つけることができました。

本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託研究「平成25年度保障措置環境分析調査」の成果の一部です。



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