5-17 サイクロトロンの加速領域に入射するビームを観る

−エミッタンス・アクセプタンス測定装置の開発−

図5-44 (a)エミッタンス・アクセプタンス測定システム(b)アクセプタンス測定手順

拡大図(242KB)

図5-44 (a)エミッタンス・アクセプタンス測定システム(b)アクセプタンス測定手順

イオン源から発生したビームのエミッタンスを実効的に拡大する電磁石、ビームの位置角度範囲を制限する位相空間コリメータ、そして二つのビーム強度モニターで構成されています。

 

図5-45 エミッタンス・アクセプタンス測定結果

図5-45 エミッタンス・アクセプタンス測定結果

(Kashiwagi, H. et al., Rev. Sci. Instrum., vol.85, no.2, 2014, p.02A735-1-02A735-5., より一部加筆して転載)
測定したエミッタンスとアクセプタンスをひとつの図に表示することで、加速領域と入射するビームの領域の位置関係を可視化できました。

高崎量子応用研究所イオン照射研究施設(TIARA)のサイクロトロン加速器(以下、サイクロトロン)では、バイオ技術や材料科学研究等で求められる様々な種類のイオンビームを実験ごとに切り替えて提供しています。ビームの種類の変更に伴って、照射に必要なビーム量を得るため、サイクロトロンに入射したビームに対して加速されて出射するビームの割合を最大にする調整が求められます。この調整は加速器が加速することのできる範囲(アクセプタンス)に入射ビームの位置と角度の範囲(エミッタンス)を重ね合わせることに相当します。アクセプタンスの範囲外に入射したビームは加速できないので、アクセプタンスの中にビームのエミッタンスを収めなければなりません。しかし、これまで入射ビームのエミッタンスの測定方法はありましたが、サイクロトロンのアクセプタンスの測定方法はありませんでした。そこで、サイクロトロンのアクセプタンスの測定方法を考案し、エミッタンスとの重なりの程度が一目で分かる、エミッタンス・アクセプタンス測定装置を新たに開発しました。

開発した測定システムを図5-44(a)、測定手順を図5-44(b)に示しました。アクセプタンス測定では最初に、ソレノイド・ステアリング電磁石を用いてイオン源からのビームのエミッタンスを実効的に拡大し、広い計測範囲を確保します(図5-44(b)@)。次に、位相空間コリメータと呼ばれる二つのスリットでビームの位置範囲と角度範囲を制限することで、このエミッタンスを多数の微小領域に分割し(図5-44(b)A)、それを一つずつサイクロトロンに入射します。そして、サイクロトロン内部のビーム強度モニター2で加速されたビームを検出し、加速された領域のみを抽出することでアクセプタンスを求めます(図5-44(b)Bの橙色領域)。一方、エミッタンスは拡大操作を行わずに、位相空間コリメータと直後のビーム強度モニター1を用いて分割した入射ビームの各領域の強度を計測することで求めます。

実際に測定したエミッタンス・アクセプタンスを同一平面上に表示した例を図5-45に示しました。このように、本装置の開発により、加速領域であるアクセプタンスと入射ビームの領域であるエミッタンスの相互関係を可視化できるようになりました。

今後は本装置による計測結果を基に、アクセプタンスにエミッタンスを重ね合わせて出射ビームの割合を最大にする調整システムの開発を進めていきます。



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