6-3 高温ガス炉水素製造システムの経済性評価

−水素製造コスト評価と競合可能性の検討−

図6-6 化石資源を原料とする水素製造法とHTGR-ISとの水素製造コストの比較

図6-6 化石資源を原料とする水素製造法とHTGR-ISとの水素製造コストの比較

HTGR-ISではCCSが不要なこともあり、HTGR-ISが将来的に既存の水素製造法と競合できる可能性を示しました。

 

表6-1 産業分野における水素製造コストの競合性

熱効率40%以上,稼働率80%以上のケースで、HTGR-ISの水素製造コストはFCV用水素燃料などに求められる水素製造コストを満足できるので、このコストを目標値として研究開発を進めていきます。

表6-1 産業分野における水素製造コストの競合性


きたるべき低炭素社会へ向けてクリーンなエネルギー媒体である水素の需要増が見込まれており、安定かつ大量に水素を供給できる水素製造技術の速やかな開発が求められています。高温ガス炉の熱エネルギーを用いることにより、水から水素を製造する熱化学法ISプロセスは、COを排出することなく、安定かつ大量に水素を生産でき得る、将来の水素製造技術のひとつとして、水素・燃料電池戦略ロードマップに記載されるなど、大きな期待が寄せられています。

私たちは現在、原子炉施設と水素製造施設の接続時の安全基準策定や安全基準に適合する設計対策の確立を目的とした高温工学試験研究炉(HTTR)接続試験に向け、工業用材料を用いた機器・設備の信頼性を確証中です。今後、その実用化に向けた経済性評価が必要ですが、最適化された大型商用プラントの経済性を精度良く評価することは現段階では困難です。

そこで、既存の化石資源を用いた大型商用水素製造プラントの経済性評価データを基にして、将来の商用高温ガス炉ISプロセス水素製造システム(HTGR-IS)の経済性を評価しました。本評価(評価条件:水素製造効率50%,稼動率80%,水素製造設備は10年ごとに更新,水素製造設備の建設費は同規模のナフサ改質プラントの2倍(技術開発により機器合理化,材料廉価化が達成できると想定),エネルギー費における単位量当たりの熱費=0.7円/MJ及び電力費5.8円/kWh)において、水素製造コストは25.4円/Nmであり、それに占める水素製造設備の資本費の割合は13%、エネルギー費が占める割合は78%でした。よって、エネルギー源である高温ガス炉の建設コストの削減,稼働率の向上が水素製造コストの削減に大きく寄与することが分かりました。また、本評価と既存の化石資源を原料とする水素製造法の水素製造コストを比較しました(図6-6)。CCS(二酸化炭素の回収・貯留)が不要なこともあり、化石資源を必要としないHTGR-ISが、化石資源を原料とする方法と将来的に競合できる可能性を示しました。また、産業分野におけるニーズに対しての水素製造コストの競合性を検討すると(表6-1)、熱効率40%以上,稼働率80%以上の場合に、燃料電池自動車(FCV)用水素燃料などに求められる水素製造コストを満足できるので、これをHTGR-ISによる水素製造コストの目標値として今後の研究開発を進めていきます。



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