7-5 長寿命燃料被覆管の実用化を目指して

−強度と靱性,耐食性に優れた11Cr-ODS鋼の開発−

図7-10 9Cr, 11Cr-ODS鋼のクリープ強度(700 ℃)

図7-10 9Cr, 11Cr-ODS鋼のクリープ強度(700 ℃)

11Cr-ODS鋼と9Cr-ODS鋼のクリープ強度は同程度であり、高Cr化の影響は小さいことが分かりました。これは酸化物粒子を材料中に分散させる工夫により材料が十分強化されているためと考えられます。

 

図7-11 完全プレアロイODS鋼とプレミックスODS鋼の靭性

図7-11 完全プレアロイODS鋼とプレミックスODS鋼の靭性

完全プレアロイ法を適用することで、靭性の高いODS鋼の製造に成功しました。その特性は酸化物による強化を行っておらず靭性に優れた従来の11Crマルテンサイト鋼(PNC-FMS)に匹敵します。

安全性及び経済性に優れる高速炉を実用化するためには、高温で中性子照射を受ける過酷な使用環境下における強度特性や形状安定性(体積膨張が小さい)に優れた長寿命燃料被覆管の開発が不可欠です。そのため、私たちは酸化物分散強化型(ODS: Oxide Dispersion Strengthened)鋼の研究開発を進め、第一候補として上記の要求を満足する9クロム(Cr)-ODSマルテンサイト鋼被覆管を製造し、より大規模に製造するための検討を行っています。

一方、再処理工程で使用済燃料を硝酸に溶解する際、被覆管の溶出量が大きいと、廃棄物(ガラス固化体)の発生量の増加を招き、燃料サイクル全体のコストが増加してしまいます。そこで、硝酸に対する耐食性を向上させるために新たにCr量を増加した高Cr-ODS鋼の開発も並行して進めています。

高Cr-ODS鋼の開発では、9Cr-ODS鋼の優れた特性を維持することが重要であることから、母相の組織をマルテンサイトにする必要があります。このため、Cr量を11%程度までに抑えるとともに、これまで進めてきたODS鋼の組織(結晶の種類や大きさ)制御及び強化機構に関わる研究成果に基づき、化学組成を最適化した11Cr-ODSマルテンサイト鋼を製造しました。その11Cr-ODS鋼について高温・長時間の強度を評価するため、実際に使用する際の最高温度として想定される700 ℃でクリープ試験を実施し、図7-10に示すように11Cr-ODS鋼のクリープ強度が9Cr-ODS鋼と同等に優れていることを確認できました。

しかしながら、一般に強度の高い材料はそれと引き換えに靭性が低い(き裂や衝撃力に弱い)傾向があります。更に粉末冶金で製造するODS鋼は、内部に粗大な酸化物や窒化物といった介在物等の欠陥が生じやすく、靭性低下が助長されます。そこで、製造方法として比較的簡易なプレミックス法に代えて、破壊の原因となる介在物の発生を可能な限り抑えた完全プレアロイ法を適用して11Cr-ODS鋼の製造を行いました。その結果、図7-11に示すようにプレミックス法で製造した11Cr-ODS鋼と比較して靭性が大きく向上しました。

耐食性の高い11Crで開発したODS鋼の高温強度と靱性にも優れた燃料被覆管材料としての可能性が示されたことから、次のステップとして、この完全プレアロイ11Cr-ODS鋼を加工した被覆管での試験準備を進めています。



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