8-7 地下坑道掘削時の岩盤の損傷状態を探る

−弾性波速度構造と岩盤壁面の観察による割れ目分布に基づく損傷の把握−

図8-17 掘削により生じた割れ目の例(350 m調査坑道)

拡大図(516KB)

図8-17 掘削により生じた割れ目の例(350 m調査坑道)

(b)に示す灰色の直線は、掘削により生じた割れ目を示しています。

 

図8-18 弾性波トモグラフィ調査結果

拡大図(176KB)

図8-18 弾性波トモグラフィ調査結果

調査坑道掘削前後の坑道周辺岩盤の弾性波速度をコンター図に示したもので、調査坑道を上から見た図です。

 

図8-19 弾性波速度と割れ目密度の関係

図8-19 弾性波速度と割れ目密度の関係

グラフ中のプロットは、弾性波トモグラフィ調査のそれぞれの波線(発振器と受振器を結ぶ測線)における弾性波速度と波線を横切る割れ目本数から計算される割れ目密度との関係を示しています。

地下に坑道を掘削すると、坑道掘削に伴う応力再配分により、図8-17に示すように坑道周辺の岩盤に新たに割れ目が発生します。このように生じた割れ目が、ほかの掘削により生じた割れ目や、天然の割れ目とつながりあうことで、岩盤の透水性の増大を引き起こすような領域が発生します。このような領域は、掘削損傷領域(Excavation Damaged Zone:EDZ)と呼ばれています。地層処分においては、処分坑道に廃棄体を埋設したあと、EDZが長期的な核種移行経路になる可能性があるため、 EDZの定量的な評価手法の確立が、地層処分の安全性の評価のために重要となります。

幌延深地層研究センターでは、各深度(深度140 m,250 m,350 m)の調査坑道及び東立坑350 m以深において、EDZ評価の一環として、掘削による岩盤の損傷度合いや損傷の幅を、弾性波速度の変化から推定することができる弾性波トモグラフィ調査を実施しています。図8-18に、250 m調査坑道において測定した結果を示します。(c)は掘削前(d)は調査領域掘削直後(e)は調査坑道全域掘削終了後の弾性波速度の分布です。(c)より、初期の弾性波速度は1.6〜1.8 km/s程度であることが分かります。また(d)(e)より、坑道掘削後は坑道から最大約1.0 m以内の範囲で、弾性波速度が初期値に対して顕著に低下した領域が存在します。このような弾性波速度の低下に関して、掘削ごとに実施される掘削壁面の観察により得られた割れ目の長さと座標を基に、割れ目を円盤と仮定したときの弾性波トモグラフィの観測線(受発振器間で弾性波の伝播する経路)が横切る割れ目の本数を計算し、調査領域内部の割れ目の密度と弾性波速度の傾向を調べました。図8-19にその結果を示します。本図より、割れ目密度の増大とともに弾性波速度がほぼ線形に低下することが分かりました。このことから、弾性波速度の低下から、調査領域内部の割れ目の密度を推定できる可能性があることが示されました。また、弾性波トモグラフィ調査領域付近で別途実施した透水試験では、壁面から約0.2〜1.2 mの範囲で、割れ目の発達に起因する高い透水性が確認されたことから、250 m調査坑道におけるEDZは、およそ1.2 m程度と推定されます。今後は、350 m調査坑道や東立坑で実施された原位置試験や数値解析の結果を基に、幌延深地層研究センターにおけるEDZの概念モデルを構築していきます。



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