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1 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発

復興及び廃炉に役立つ研究開発成果の提供を目指す

図1-1 2015年度から開所する環境回復研究の発信地となる環境創造センター

図1-1 2015年度から開所する環境回復研究の発信地となる環境創造センター

三春町施設は、モニタリング,調査・研究,情報収集・発信,教育・研修・交流の四つの機能を有します。私たちは、環境動態研究などをここで実施します。なお、福島県と国立環境研究所とこれらの施設を共有し、研究開発を連携して進めます。南相馬市施設は、原子力発電所周辺のモニタリングや安全監視の機能を担う施設で、ここを利用して隣接する浜地域農業再生研究センター(仮称)や福島第一オフサイトセンター(仮称)と調査研究や安全監視の連携を図ります。私たちは、放射線計測技術の開発をここで実施します。

 

図1-2 廃炉国際共同研究センターの機能
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図1-2 廃炉国際共同研究センターの機能

2015年4月に廃炉研究の中核として廃炉国際共同研究センターを設置しました。東海,大洗等の施設や原子力機構が福島県に整備中の各施設を活用し、東京電力,国際廃炉研究開発機構(IRID),原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)及び環境省,福島県と連携して研究を進めることとしています。

 

図1-3 楢葉遠隔技術開発センター及び大熊分析・研究センターの立地場所
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図1-3 楢葉遠隔技術開発センター及び大熊分析・研究センターの立地場所

楢葉遠隔技術開発センターは、研究管理棟(4階建て:幅35 m×奥行25 m×高さ20 m)と試験棟(1階建て:幅60 m×奥行80 m×高さ40 m)から構成され2016年度に本格運用します。大熊分析・研究センターは、「施設管理棟」、低放射線量のがれき類,汚染水二次廃棄物等を扱う「第1棟」及び高放射線量の汚染水二次廃棄物,燃料デブリ等を扱う「第2棟」から構成され、2017年度内の運用開始を目指します。

 


環境回復にかかわる研究開発で住民の安全・安心に貢献

「福島復興再生基本方針」(2012年7月閣議決定)に基づく取組みを的確に推進するための「環境創造センター中長期取組方針」(福島県環境創造センター運営戦略会議)や同方針で策定される方針等に基づいて、住民が安全で安心な生活を取り戻すために必要な環境回復にかかわる研究開発を進めています(図1-1)。

 

生活圏のモニタリング,個人線量評価技術の提供を行うとともに、森林,河川,沿岸海域等の線量評価手法の確立を目指す環境モニタリング・マッピング技術開発を行っています。

放射性セシウムの物理的減衰による影響を除いた、人為的な影響を含む実際の環境における移行挙動の影響をひとまとめにして評価した空間線量率の半減期を「環境半減期」と呼びます。この半減期を考慮したシミュレーションモデルを利用して様々な土地利用での線量率変化を評価しました(トピックス1-1)。東京電力株式会社福島第一原子力発電所(1F) 事故で 土壌に広範囲にわたって沈着した放射性セシウムによる被ばく線量を評価する解析方法を開発しました(トピックス1-2)。

 

農業・林業等の再生や避難指示解除及び住民の帰還を進める各自治体に、環境中の放射性セシウムの挙動を評価し、その結果を提供することで貢献する環境動態研究を進めています。

日本に生育する地衣類中の放射性セシウム濃度を指標として、環境中に放出された放射性セシウムの初期降下量を推定する研究に取り組んでいます(トピックス1-3)。淡水中の放射性ストロンチウムは、低濃度であるため、その放射能を精度良く測定するには大容量(100 L以上)の水試料を濃縮して分析する必要があり、これを解消する効率的な分析方法を見いだしました。この分析法を住民のより詳細な被ばく評価や環境モニタリング,環境中の核種移行評価等の研究に役立てます(トピックス1-4)。また、1F事故による海洋への影響を詳細に把握することを目的に、茨城県沿岸で採取した海底土について、放射性物質の濃度測定を行いました(トピックス1-5)。

 

除染で発生する除去土壌等の管理にかかわる負担低減に貢献するために、放射性セシウムの移行メカニズムの解明等を行うとともに、その成果を活かした合理的な減容方法及び再利用方策の検討を行っています。

効率的・効果的な除染の実施を支援することを目的として開発した除染活動支援システム(RESET)は、国や自治体が策定する除染計画の立案に利用されています(トピックス1-6)。土壌中のセシウムは、主に雲母類粘土鉱物に強く吸着されており、雲母類粘土鉱物からセシウムを分離できれば、除染で発生する廃棄土壌の減容化が可能です。そこで、第一原理計算手法と呼ばれる計算科学手法を用いて、吸着形態を解明しました(トピックス1-7)。さらに、私たちは福島県内でも広く見られる粘土鉱物の一つであるバーミキュライトに放射性セシウムが吸着しやすいことを突き止め、ナノメートルレベルでバーミキュライトにセシウムが吸着するメカニズムを観察しました(トピックス1-8)。放射性セシウムに汚染した下水汚泥焼却灰が大量に発生しました。放射性セシウムなどを含む指定廃棄物扱いの下水汚泥焼却灰の適切な処理と、その容積を減少させる方法について検討しました(トピックス1-9)。

 

廃止措置に向けた取組み

原子力機構では、国内外の大学,研究機関,産業界等の人材が交流するネットワークを形成,産学官による研究開発と人材育成を一体的に進める体制を構築するために、国際的な研究開発拠点として2015年4月に廃炉国際共同研究センターを設置して廃炉に向けた研究開発に取り組んでいます(図1-2)。廃炉国際共同研究センターでの具体的な取組みとして、国内外の英知を結集する場の整備,国内外の廃炉研究の強化,中期的な人材育成機能の強化,情報発信機能の整備を掲げており、廃炉に向けた研究開発の中核としての役割を担っています。当面は、東海,大洗地区の既存の施設を活用して研究開発を進めますが、福島での研究開発拠点として原子力機構が整備中の「楢葉遠隔技術開発センター(2015年度〜)」、「大熊分析・研究センター(2017年度〜)」を活用した共同研究事業を順次開始する予定です。また、多様な分野の基盤的な研究開発に関し、外部の研究者が自由に共用できる研究開発拠点として福島県内に「国際共同研究棟」を整備し、基盤的な研究開発と現場での技術の連携を図り、大学等の参画により人材育成の場として活用していきます。

 

プール燃料及びデブリ取出し準備

1F事故では使用済燃料の冷却のために大量の海水が注入され燃料集合体の構成材料の腐食が懸念されます。使用済燃料を共用プールで保管していく上で必要となる強度や腐食に関する健全性確認を行っています(トピックス1-101-11)。

炉内に残っている燃料デブリを安全に取り出す際に、燃料デブリがどのような状態になっているのかは取出し工具や装置の選定を行う上でとても重要な情報であり、あらかじめ把握しておくことが必要不可欠です。燃料に対して溶け込んだ被覆管の成分が変わったときに硬度がどのように変化するか(トピックス1-12)や炉内で冷却水に長期間浸漬しているとどのように変化するのか(トピックス1-13)を把握するための試験を行っています。

 

事故進展評価

炉心溶融がどのように進展したのかを詳細に把握するために、解析により事故時の燃料棒の破損プロセスや圧力容器下部の破損部分を解析や試験により評価等を行っています(トピックス1-141-151-161-17)。また、事故時に放出される放射性物質の性状の評価を行っています(トピックス1-18)。

 

放射性廃棄物の処理・処分

事故に伴い発生した廃棄物を安全に保管,処理,処分していくことは廃炉に向けて非常に重要な取組みであり、このためには放射性廃棄物がどのような状態で発生したかを把握する必要があります。現時点では直接的に試料採取・分析を行えず正確なデータを揃えることが困難な廃棄物が多くありますが、これらに対しても放射能量を推定することを可能にする方法の検討を進めています(トピックス1-19)。また、高放射線量の廃棄物では内蔵している水分が放射線分解することにより水素が発生することは知られていますが、実験的に水素の発生量を評価してこれらの廃棄物を安全に保管できることを示しています(トピックス1-20)。

福島研究基盤創生センターでは、1Fの廃止措置に向けて、原子炉からの燃料デブリの取出し準備にかかわる技術開発と、1Fの廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の処理・処分に必要な技術開発を担う研究拠点の整備を行っています。図1-3に示すように、「遠隔操作機器・装置の開発・実証試験施設」(以下、楢葉遠隔技術開発センター)は福島県楢葉町,「放射性物質の分析・研究施設」(以下、大熊分析・研究センター)は同大熊町に整備を進めています。各拠点について、以下に概要と状況を示します。

 

楢葉遠隔技術開発センター

研究管理棟には、事業管理や会議を行うほかに「仮想現実空間の中で計画した作業を実施することによる作業方法・手順等の確認」及び「容易に立ち入れない現場での作業を体験することによる作業員の教育や遠隔操作機器の操作訓練の実施」が可能な没入型のバーチャルリアリティ(VR)システムを開発・導入します。試験棟には、原子炉格納容器下部の漏えい箇所の補修・止水技術や1F建屋内での調査,除染等のために必要な遠隔操作機器の開発実証試験を実施するための試験設備等の整備がほぼ完了し、2016年度の本格運用の準備が間もなく整う状況です。

 

大熊分析・研究センター

1F内の放射性廃棄物の処理・処分に関して、放射性核種の種類や物理特性といった放射性物質の性状の分析・評価や放射性廃棄物保管中の安全性評価,放射性廃棄物の廃棄体化のための試験,処分の安全性を評価する技術等が必要となります。これらの技術開発では、以下の事項に留意しながら、外部専門家による検討会を設置するなど取組みを加速しています。

●分析にかかわるルーチン業務と研究開発の同時実施

●多様な試験への柔軟性

●施設利用性の向上

●迅速かつ信頼性の高い測定・評価

現在、「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の運用時期を念頭に、大熊分析・研究センターの設計を着実に進めています。

 

研究拠点の目指すもの

国内外の英知を結集するため、国内では、大学・企業等との連携を実現するイノベーションハブの形成を進めるとともに、国外では、テキサスA&M大学との遠隔操作機器の実証試験の将来の協力のための覚書締結をはじめ、国際ネットワークの構築や施設利用に供する協力協定を結ぶなど、研究開発の資源が有機的に機能する拠点を目指しています。1Fから20 km圏内に位置する研究拠点は唯一であり、研究開発とその成果の発信により施設利用の促進と魅力ある拠点を確立し、地域産業の創生への貢献を実現します。



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