1-16 原子炉事故時の圧力容器下部の破損箇所を推定する

−圧力容器下部ヘッド破損挙動評価手法の開発−

図1-37 圧力容器下部ヘッドの解析モデル

図1-37 圧力容器下部ヘッドの解析モデル

1FのようなBWRの圧力容器下部ヘッドは、制御棒を通すための貫通孔や制御棒案内管と圧力容器をつなぐための溶接部が多数存在し、とても形状が複雑です。溶融燃料が落下した場合の下部ヘッドの破損箇所や破損時間は、このような複雑な形状の影響を受けると予想されます。そこで、事故時の下部ヘッドの破損挙動を詳細に評価するため、溶接部を含む詳細な三次元モデルを作成しました。

 

図1-38 解析で得られる温度分布の例

図1-38 解析で得られる温度分布の例

詳細な三次元モデルを用いた熱流動解析による温度分布の一例です。左上の図の黄色の部分は、溶融した燃料と材料が移行した領域です。ここが加熱されることにより、下部ヘッドを構成する材料の温度も高くなり、クリープによる変形が生じるものと考えられます。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)における事故進展や炉内状況の推定に役立てるとともに、現在のシビアアクシデント(SA)解析コード(例えば原子力機構が開発しているTHALES2等) の高度化に資するため、私たちは溶融燃料が落下した際の圧力容器下部ヘッドの破損挙動を評価するための研究開発を進めています。現在のSA解析コードでは、溶融した炉心燃料と材料が下部ヘッドに移行し堆積した後の下部ヘッドの温度や応力などの時間変化やその破損を、単純な形状のモデルや評価手法を使って評価しています。このため、下部ヘッドの破損時間やその後の事故進展の推定には、大きな不確かさ(ばらつき)が含まれます。1Fのような沸騰水型原子炉 (BWR) の圧力容器下部ヘッドは、多数の制御棒案内管等が貫通し、構造が複雑であることから、より局所的な破損箇所や破損に至るまでの時間を推定するための手法の開発が必要であると考えられます。

本研究では、溶融燃料の挙動を把握するための数値流体力学に基づく熱流動解析及び熱流動解析により得られる表面温度や圧力等を境界条件とする構造解析(熱弾塑性クリープ解析)を組み合わせた熱流動・構造連成解析手法の整備と、破損箇所や時間を推定する手法として、クリープ変形に伴う材料の損傷程度を評価する手法の整備を進めています。

BWRを対象とした場合に重要となる制御棒等の貫通部を考慮した三次元モデル(図1-37)を用いて得られた解析結果の例を図1-38に示します。この例は1F事故のシナリオとは一致していませんが、炉心で溶融した燃料と材料のうち10%が下部ヘッドに落下し、冷却水により冷却され固化した状態を初期状態として解析を行った結果です。崩壊熱により落下した燃料と材料が再び加熱されるため、下部ヘッドを構成する材料の温度も高くなっている様子が見て取れます。クリープ変形による損傷基準を用いて、温度分布や圧力などの影響を考慮して材料の壊れやすさ(損傷指数)を評価したところ、損傷指数が最大となる貫通部近傍で破損することが推定されました。

今後、試験(トピックス1-17)との比較を通じてクリープ変形に伴う破損時間の推定精度を向上させるとともに、異なる事故シナリオに対する評価を行うことで、1Fの圧力容器下部ヘッドの破損箇所の推定やSA解析コードの高度化に役立つ知見を得ることを目指します。



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