2-5 放射性ヨウ素の岩石への収着を調べる

−試験による収着分配係数の評価−

図2-13 収着試験のフロー

図2-13 収着試験のフロー

(a)岩石を試験溶液に投入し、収着試験を開始します。(b)濃度変化が見られなくなるまでサンプリングと濃度測定を行います。(c)試験溶液と岩石を取り出します。(d)洗浄液の濃度を測定し、ヨウ素の壁面吸着量を評価します。

 

図2-14 ヨウ素の花崗閃緑岩及び凝灰質砂岩への収着分配係数と硝酸ナトリウム濃度との関係

図2-14 ヨウ素の花崗閃緑岩及び凝灰質砂岩への収着分配係数と硝酸ナトリウム濃度との関係

ヨウ素の収着分配係数Kdは花崗閃緑岩については硝酸ナトリウム濃度が0 mol/dm3の条件、一方、凝灰質砂岩については0.5 mol/dm3の条件で誤差範囲がゼロを含んでおり、有意なKdが得られませんでした。その他の条件ではKdは非常に小さいものの有意な値となることが分かりました。このように、ゼロに近い状態でもデータの有意性が判断できるようになりました。

 


使用済燃料の再処理工場から発生する放射性廃棄物には、ヨウ素-129(半減期1.6×107年)等の長寿命放射性核種が含まれます。そのような廃棄物を地層処分する場合、長い時間が経つと地下水と廃棄物が接触することで核種が溶け出し、岩盤中を移動する可能性があります。移動する際に核種が岩石に収着することで動きが遅くなり、核種の移動を遅延する効果が岩盤に期待できます。核種の岩石への収着のしやすさを評価する指標として収着分配係数Kd)が用いられています。

Kdは岩石中と液中の元素濃度比であり、負の値になることはありません。Kdを試験で取得する際、岩石中の元素濃度を精度良く直接測定することが難しいので、図2-13に示すように岩石に接触させる前と後の液中の元素濃度をそれぞれ求め、それらの濃度差から岩石に収着した元素の量を求めます。しかし、液中の元素濃度の測定値には分析や操作による誤差が含まれ、岩石中の元素量は大きな誤差を含む値や、負の値となる場合があります。このような問題は、ヨウ素のようにほとんど収着しない元素の場合、Kdが非常に小さくゼロに近いために顕在化します。そうした元素に対して、収着によって岩盤中での移動を少しでも遅延する効果が期待できるか否かを知るためには、これらの誤差を適切に評価して、得られたKdがゼロを含むか否かを明らかにすることが必要です。

本研究では、廃棄物から溶け出る硝酸ナトリウムの影響を考慮し、様々な濃度条件に対して、放射性ヨウ素と凝灰質砂岩及び花崗閃緑岩の収着試験を実施しました。ヨウ素の岩石への収着量がわずかなため、試験容器壁面への吸着量を差し引いてKdを評価する際、試験溶液の調整等の過程で生じる種々の誤差伝播を考慮しました。その結果、図2-14に示すようにヨウ素は岩石にほとんど収着せず、Kdは非常に小さいものの、条件によってはゼロではない有意な値を持つことが分かりました。この成果により、廃棄物処分の安全性の評価上重要な核種で、非常に小さいKdが見込まれる場合の適切な試験及び評価手法を提示できました。

本研究は、原子力規制委員会原子力規制庁(旧 独立行政法人原子力安全基盤機構(平成19年度)及び旧 経済産業省原子力安全・保安院(平成20,21年度))からの受託研究「放射性廃棄物処分の長期的評価手法の調査」の成果の一部です。



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