4-11 全ての放射線の動きを計算コードで再現

−国産の汎用放射線輸送計算コードPHITSの完成−

図4-26 PHITS開発の概要とその応用先
拡大図(336KB)

図4-26 PHITS開発の概要とその応用先


放射線は、物質中で核反応や電離を起こしながら複雑な動きをします。それらの振る舞いを正確に模擬することは、原子炉・加速器など放射線施設の設計や放射線治療の治療計画などで極めて重要となります。このような背景から、放射線の挙動を模擬する計算コード(放射線輸送計算コード)が国内でいくつか開発されてきましたが、それらは、扱える放射線の種類や計算機能が限定されており、様々な目的に対して利用するには不十分でした。

そこで私たちは、国内外の複数機関と組織横断型の開発体制を構築し、主に国内で開発された放射線輸送にかかわる様々な基盤技術を統合してそれらを大幅に発展させることにより、国産の汎用放射線輸送計算コードPHITSを完成させました(図4-26)。PHITSコードの主な開発内容は、以下のとおりです。

(1)原子力分野で重要となる低エネルギー中性子や光子のみならず、加速器,医療,宇宙開発分野で重要となる高エネルギー陽子や重イオンなど、様々な放射線について幅広いエネルギー範囲での挙動を解析可能としました。

(2)計算精度の高い最新の核反応モデルや核データライブラリなどをコードに組み込み、測定値を精度良く再現できる信頼性の高い計算を可能としました。

(3)大型計算機など特殊な計算環境でのみ利用可能な並列機能のみならず、計算環境に依存しない汎用型の並列計算機能も導入し、Windows(R) PCなど一般的な計算機でも効率的に計算可能としました。

(4)コードのインストールや利用が簡単にできる機能を開発し、従来の計算コードよりも操作性を格段に向上させました。また、幅広い分野の利用者を対象とした講習会を年10回程度開催するなど、充実したサポート体制を確立しました。

以上の特徴により、PHITSは、放射線施設設計,医学物理計算,放射線防護研究,宇宙線・地球科学分野など、工学・医学・理学の様々な分野で利用されています。また、講習会の開催やホームページなどによる積極的な情報発信の結果、PHITSの国内登録ユーザー数は、公開からわずか5年で1600名を超えるに至り、その数は現在も年間約300名のペースで増え続けています。PHITSの入手方法など、より詳細な情報は、PHITSホームページ(http://phits.jaea.go.jp/indexj.html)から入手できます。



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