6-1 世界初の商用高温ガス炉燃料の実用化を目指して

−高燃焼度化燃料の照射性能に関するカザフスタン共和国との協力研究−

図6-2 カザフスタン共和国の核物理研究所(INP)における高温ガス炉燃料のキャプセル照射試験
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図6-2 カザフスタン共和国の核物理研究所(INP)における高温ガス炉燃料のキャプセル照射試験

新設計の二酸化ウラン3重4層(UO-TRISO)被覆燃料粒子の照射性能を把握するため、原子燃料工業が製造した燃料試料を、高温ガス炉と同じヘリウムガス雰囲気で照射できる金属製キャプセルに装荷して中性子照射しました。

 

図6-3 中性子照射中に放出されたクリプトン-88の放出率から評価した被覆燃料粒子の健全性評価の結果

図6-3 中性子照射中に放出されたクリプトン-88の放出率から評価した被覆燃料粒子の健全性評価の結果

照射温度の低下とともに実測値は上昇しましたが、初期破損(製造時に生じたわずかな燃料破損:多くとも6粒子程度)のレベルを超えず、期待通りに高い照射性能を有することが示されました。

 


高温ガス炉の実用化に向けた経済性向上や廃棄物量の大幅低減を目指して、最高燃焼度160 GWd/tを目標とする高燃焼度化燃料の研究開発を進めています。実用高温ガス炉燃料の平均燃焼度に相当する100 GWd/t規模の照射データは過去に独国や米国などで取得され、また日本でも高温工学試験研究炉(HTTR)開発における先行研究で90 GWd/tまでの照射データが得られましたが、いずれも商用燃料設備で製造された高品質な燃料のものではありませんでした。そこで私たちは、HTTR燃料を製造した原子燃料工業と共同で高燃焼度化燃料を設計・製造し、その照射データを取得するため、高温ガス炉の開発を国家計画として進めているカザフスタン共和国との間で、核物理研究所(INP)が所有するWWR-K照射炉を用いた中性子照射試験を行いました。

照射試験は2012年10月に開始され、照射温度1050±100 ℃,照射期間約400日,燃焼度100 GWd/tを目指して行われました。WWR-K照射炉に装荷する照射キャプセル(図6-2)はINPが設計・製作しました。また照射中の燃料の健全性を評価するため、燃料からキャプセル内をスウィープしているヘリウムガス中に放出される核分裂生成物(FP)ガスのうち先行核種の影響を受けないクリプトン-88をINPが定量分析しました。私たちはHTTR運転データ等に基づきFPガスの放出挙動をモデル化した評価式から求めたクリプトンの放出率予測値を測定値と比較する方法で、照射中の被覆燃料粒子の追加破損の割合を評価し健全性を確認しました。

照射日数260日(約70 GWd/t)到達時点でのクリプトン放出率の実測値を予測値と比較した結果(図6-3)、燃料破損ゼロから初期破損(製造時に生じたわずかな燃料破損)のレベルの範囲に収まり、燃料健全性が設計通りであることが示されました。最終的に2015年2月までに燃焼度90 GWd/tを超える照射に成功し、商用設備で製造された高品質な高温ガス炉燃料では世界で初めて、実用炉レベルの高燃焼度下での健全性を確認し、将来の160 GWd/tに向けた高燃焼度化燃料の開発に弾みをつけました。

今後、照射後試験を通じて燃料の燃焼度分析等を行い、燃料の照射特性をより詳しく調べる計画です。



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