6-5 高温ガス炉の熱を一般産業へ提供するために

−高温ガス炉熱利用施設接続の安全評価技術の開発−

 図6-10 核熱供給試験(コールド)

図6-10 核熱供給試験(コールド)

ガス循環機の入熱により原子炉入口温度を120 ℃に保持し、空気冷却器を通る加圧水の流量調節により加圧水温度に変動を与えることで、原子炉入口温度に最高約30 ℃の温度変動を与え、熱利用施設での熱負荷変動を模擬しました。

 

図6-11 核熱供給試験(コールド)の試験結果と解析結果

図6-11 核熱供給試験(コールド)の試験結果と解析結果

伝熱促進効果を考慮しない場合の解析結果(線)は、原子炉入口温度(線)の変動に対する原子炉出口温度の応答が速く、試験結果(線)を再現しません。一方、これらを考慮した場合の解析結果(線)は、試験結果と一致し、原子炉出口温度の応答が遅れる様子を適切に再現しました。

 

図6-12 原子炉出力100%状態での熱負荷変動解析

図6-12 原子炉出力100%状態での熱負荷変動解析

原子炉出力100%の状態で、原子炉入口温度に10 ℃の熱負荷変動を与えた際の原子炉出口温度と原子炉出力を示しています。伝熱促進効果を考慮することにより原子炉出口の温度変動を適切に評価できるようになり、原子炉内で熱負荷変動が吸収されて、変動値は+0.2 ℃とわずかになりました。

 


高温ガス炉に接続する水素製造施設等の熱利用施設は、経済性向上の観点から原子炉施設でなく一般産業施設として建設することが不可欠であり、そのため、原子力機構では、熱利用施設の状態によらず原子炉が安定した運転を継続できることを熱利用施設の「一般産業化」の条件として提案しています。このため、熱利用施設の異常時に想定される温度変動が原子炉入口に伝播した場合においても、原子炉出力や原子炉出口温度が運転上の制限値を超えないことを確証する必要がありました。これまで、高温工学試験研究炉(HTTR)で得られた試験結果を使って、これを適切に評価できるように安全評価コードを改良してきました。ところが、原子炉入口温度が変動した場合における原子炉出口温度の応答への影響因子を分析した結果、原子炉出口温度の変動の抑制効果に対して、炉内構造物の大部分を示す黒鉛のみならず炉側部金属構造材による伝熱効果の影響が大きいことを見いだしました。その効果を明らかにするため、HTTRを用いて熱供給の安定性を確認する核熱供給試験(コールド)を行い(図6-10)、他の要因による影響がない非核加熱という理想的な条件下でデータを取得しました。その結果、これまで十分には考慮されていなかった炉床部の黒鉛構造物の熱容量や炉側部の金属構造物の凹凸によるフィン効果等による伝熱促進効果を考慮することで、改良した安全評価コードが当該部での熱負荷変動の吸収による原子炉出口温度の応答遅れを適切に表現できることを明らかにしました(図6-11)。

さらに、妥当性が確認された当該コードを用いて、熱利用施設異常時における原子炉出力や原子炉出口温度等の注目パラメータの過渡挙動の予測解析を実施しました。その結果、原子炉が温度変動を吸収し、上記パラメータが通常運転時の許容変動幅内に抑制できることを示し(図6-12)、熱利用施設の一般産業化の条件が成立する見通しを得ました。

なお、現在HTTRは新規制基準への適合性確認の審査を受けていますが、本試験を通して、HTTR設備に異常がないことを確認するとともに、運転員の訓練を実施することもできました。



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