7-4 気液界面運動の物理ベースシミュレーションを実現

−高速炉ガス巻き込み現象の機構論的解析評価システム開発−

図7-10 高精度気液二相流数値解析手法の概念図

図7-10 高精度気液二相流数値解析手法の概念図

本研究では、気液界面上の様々な物理挙動をモデル化しています。

 

表7-1 Slotted-disk回転問題における計算誤差

従来手法及び開発した手法を用いて、Slotted-disk回転問題を解析した際の計算誤差を示しています。現象的には回転移動による界面変形は生じませんが、数値解析では有限個の格子上で計算を行うため、完全な界面輸送が実現できず、界面変形(表中の誤差に相当)が生じます。開発手法は、構造格子と比べて格子の歪みにより誤差が生じやすい非構造格子においても高い精度を実現します。

表7-1 Slotted-disk回転問題における計算誤差

 

図7-11 解適合格子法によるSlotted-disk形状の模擬

図7-11 解適合格子法によるSlotted-disk形状の模擬

設定した詳細度に応じて界面近傍領域の格子を動的に細分化する解適合格子法を用いることで界面形状の再現性が高まり、解析精度がさらに向上します。

 

図7-12 気液界面の引き伸ばしによるガス巻き込みの解析結果
拡大図(278KB)

図7-12 気液界面の引き伸ばしによるガス巻き込みの解析結果

角柱後流に形成された渦流れの発達によって、気液界面が細く引き伸ばされ、ガス巻き込みが発生する挙動を解析しました。

 

図7-13 円筒容器内の渦流れによる気泡の千切れの解析結果

図7-13 円筒容器内の渦流れによる気泡の千切れの解析結果

円筒容器内の渦流れによるガス巻き込み(気泡の千切れ)について詳細な解析を行い、界面先端の変形挙動を評価しました。

 


数値解析技術と計算機性能の飛躍的向上によって、従来は困難であった非線形・複雑現象を解析することができるようになっています。高速炉熱流動研究においては、上部プレナムや蒸気発生器における物理現象を対象とした機構論的数値解析評価システムの開発を進めており、なかでも重要なものの一つとして、ガス巻き込み現象を再現できる高精度気液二相流数値解析手法を開発しています。高速炉上部プレナム内にはナトリウムとそれを上から覆うアルゴンガスの界面が存在しますが、流れによって界面が変形し気泡が巻き込まれた場合、気泡が炉心を通過することによって出力変動などが引き起こされる可能性があるため、ガス巻き込み発生を数値解析的に評価し、設計検討において適切な対策構造を導入することにより、高速炉の安全性を大きく向上することができます。

気液二相流数値解析手法には様々なモデルが存在しますが、本研究では複雑形状流路における気液界面の動的変形挙動を精度良く計算することが重要であるため、非構造格子スキームを用いた体系形状模擬を行うとともに、気液両相の体積保存性に優れ界面を陽に追跡できる方法(Volume-of-Fluid法)に基づく手法開発を行いました。図7-10に数値解析手法開発の概念を示しますが、気液界面での物理挙動(界面形状変化や力学的釣合い条件)に関して、近似モデルを用いることなく幾何学的・力学的に厳密な保存則に基づく物理ベース計算を行っており、その結果として、従来手法では発生していた非物理的挙動(気液界面近傍における不連続的な速度・圧力分布)を完全に防止することに成功するとともに、数値解の収束性を保証することに成功しました。加えて、表7-1及び図7-11に示すように、従来手法を凌駕する計算精度を達成しています。

開発した解析手法を用いて高速炉ガス巻き込み現象のモデル試験の解析を実施した結果、図7-12及び図7-13に示すように、気液界面と流れの複雑な相互作用によって誘起される、気液界面の動的大変形挙動(界面上に形成された渦流れの中心線に沿った界面の引き伸ばし(図7-13(a))と界面先端における気泡の千切れ(図7-13(b))を再現することに成功しています。試験結果との比較によって、ガス巻き込み量を定量的に再現できることも確認しており、開発した数値解析手法を用いることで、従来は不可能だった高速炉ガス巻き込み現象の発生予測(発生箇所・発生頻度)を実現することが可能となりました。



| | | | |