7-6 核燃料中の酸素の振る舞いを定量化する

−酸化物燃料における酸素拡散係数の測定−

図7-16 測定データとフィッティング結果

図7-16 測定データとフィッティング結果

はAm含有PuO2の1500 ℃における重量変化率データであり、各点についてフィッティングを行った結果が━━ 線になります。

 

図7-17 酸素化学拡散係数とO/M比の関係

図7-17 酸素化学拡散係数とO/M比の関係

O/M比の低下とともにAm含有PuO2の酸素化学拡散係数はわずかに低下します。------ 線は試料中のAmの価数が変化する境界(O/M比1.964)を表しています。

 


放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究開発の一環として、ネプツニウム(Np)やアメリシウム(Am)などのマイナーアクチノイド元素(MA)を多く含む酸化物燃料の開発が進められています。MAは酸化物燃料の基礎物性に大きな影響を与えることが分かっており、特にAmは、燃料の酸素ポテンシャルを増加させ、燃料−被覆管化学的相互作用(FCCI)や核分裂生成物(FP)の化学的安定性といった照射中の燃料挙動に影響を与えることが知られています。Am含有量に対する物性値変化をより詳細に理解するため、照射挙動評価や燃料製造における重要な物性値の一つである酸素化学拡散係数を精度良く測定し評価することが必要です。

そこで私たちは、Amを含有したプルトニウム(Pu)酸化物(Am含有PuO2)を作製し、最新の技術で酸素化学拡散係数を求めることに成功しました。Am含有PuO2が還元雰囲気に置かれたとき、その中の酸素は表面を介して雰囲気中へ抜け出します。この際に生じる非常にわずかな重量減少を熱天秤で測定し、拡散方程式の解析解を用いてデータのフィッティングを行い酸素の化学拡散係数を求めました(図7-16)。

各測定温度で得た酸素化学拡散係数を測定試料の酸素(O)と金属(Pu及びAm)の原子数比(O/M比)で整理すると図7-17のようにまとめることができます。この結果から、Amの含有によってPuO2の酸素化学拡散係数は増加することが分かりました。また、1400 〜 1600 ℃の範囲において酸素化学拡散係数に明確な温度依存性が見られないことも分かりました。

酸素化学拡散係数とO/M比の関係に注目すると、Am含有PuO2の酸素化学拡散係数はO/M比の減少とともにわずかに減少する傾向が見られますが、PuO2で見られる酸素化学拡散係数のO/M比依存性は確認できませんでした。O/M比が1.964以下の領域では試料中のAmは全て三価で存在することが欠陥化学による計算から得られていますが、Am含有PuO2のデータはAmが三価となる領域中にあり、この領域では酸素化学拡散係数がPuO2よりも高くなっています。これらから三価のAmは酸素化学拡散係数を増加させる効果があることが示唆されました。

今後は、より幅広い温度及びO/M比領域での測定を行い、Amが酸素化学拡散係数に与える詳細なメカニズムを明らかにしたいと考えています。



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