1-17 自動での放射能分析を可能とするために

−環境試料中ストロンチウム-90分析用自動化システムの開発−

図1-40 自動化学分離システムの写真(核燃料サイクル工学研究所,安全管理棟)

図1-40 自動化学分離システムの写真(核燃料サイクル工学研究所,安全管理棟)

ろ過するための機材を準備している写真です。産業用ロボット(三菱電機製),器具供給システム等を組み合わせて、pH調整,沈殿生成,沈殿熟成,ろ過,試薬(固体,液体)の投入を自動で行えます。

 


東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故により、環境中には様々な放射性核種が放出され、それらのうち、γ線放出核種であるセシウム-134(134Cs),セシウム-137(137Cs)は多くの機関で測定され、その結果が報告されています。

一方、放射性ストロンチウムであるストロンチウム-90(90Sr)については、分析方法が複雑であり、分析時間もかかるため、その分析結果は放射性Csと比較すると、極めて少ない状況にあります。このため、1F事故以降、迅速に環境試料中90Srを測定することを目的に、様々な分析方法の開発が行われました。しかし、分析への供試量の制限があることから、環境レベル(灰試料であれば0.02 Bq/kg・生程度)の90Sr濃度を測定するのは困難であることや、専門的な化学分析技術が必要です。

そこで、環境レベルの90Sr濃度を分析・測定できる自動化システムの開発を目的に、環境放射線(能)モニタリングにおいて、標準的な分析・測定法マニュアルである放射能測定法シリーズに準拠した供試量及び分析法による、Srの単離までの分析作業の自動システム化を実施しました。放射能測定法シリーズでは、@イオン交換法,A発煙硝酸法,Bシュウ酸塩法,C溶媒抽出法が採用されていますが、本開発ではイオン交換法を対象としました。@湿式分解システム,A自動化学分離システム(図1-40),B自動イオン交換システムの開発を行い、最終的には、灰化した農畜海産物の分析が行える自動化システムを開発しました。

これまで作業者が全ての工程を行い、その分析件数や時間等は作業者の技量等に依存していましたが、本システムを使用することで試料の種類に依存するものの、半自動で分析が可能となりました。このため、化学分析に関する基礎知識を持っている人であれば、90Srの分析が可能となりました。また、作業者への薬品の曝露リスクを低減化できます。特に湿式分解の工程では、作業者が硝酸及び過酸化水素水を加える必要がないため、これらの取扱いのリスクはほとんどありません。

さらにこのシステムは、プルトニウム等の他の放射性核種の分析への応用も可能であり、その波及効果はとても大きいものです。この研究を継続的に実施し、誰でも化学分析を自動で行えることを目指します。

本開発は、「復興促進プログラム(マッチング促進)(JST復興促進センター)」の予算で実施したものです。



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