4-2 通り抜けた中性子を使って核物質を測る

中性子共鳴反応を利用して複雑な組成・形状の核燃料を非破壊測定−

図4-5 中性子共鳴濃度分析法(NRD)の測定概念図
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図4-5 中性子共鳴濃度分析法(NRD)の測定概念図

(a)試料を透過した中性子の数を調べると、赤矢印のような凹み(中性子の抜け落ち)が観測されます。凹みの深さから核物質の量を測ります。(b)試料から発生した不純物のγ線を検出した様子を示します。

 

図4-6 原理実証実験で得られた結果
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図4-6 原理実証実験で得られた結果

(c)中性子共鳴透過分析法(NRTA)測定から模擬核物質による凹みが見られ、その量が分かります。(d)γ線測定からNiに由来したγ線(矢印)が観測できました。観測されたγ線は、図に示すようなエネルギー状態を遷移して発生します。

 


近年、非破壊で核燃料中のウランやプルトニウムといった核物質の量を測る重要性が増しています。特に、東京電力福島第一原子力発電所で起こったような過酷事故で発生が予測される、燃料デブリ中の核物質を精度良く測ることは、世界的に未解決な課題でした。私たちは、この課題の解決のため、中性子を測る技術とγ線を測る技術を合わせた中性子共鳴濃度分析法(NRD)という新しい非破壊分析法を考案し、欧州委員会・共同研究センター(EC-JRC)との共同研究として、その技術開発を実施しました。

NRDでは、核物質を含む試料に外からパルス中性子を照射し、試料で何も反応せず透過した中性子を計測します。中性子は、特定のエネルギーで原子核に非常に吸収されやすくなります。これを中性子共鳴と呼びます。共鳴の結果、透過した中性子の計測データには、図4-5のように凹みが生じます。凹みのエネルギーとその深さから核物質の種類と量が分かります。この手法を中性子共鳴透過分析法(NRTA)と呼びます。しかし、燃料デブリにはステンレスなどの構造材や中性子を吸収するホウ素(制御棒に由来)など、核燃料ではない不純物の混入が想定されました。NRTAを用いて分析できない不純物があると、核物質を精度良く測定できません。そこで、組み入れたγ線測定技術を用いて、不純物が中性子を吸収して放射するγ線のエネルギーを測り、NRTAでは分からない不純物を同定します。不純物が判明すれば、核物質以外で起こる中性子の抜け落ちの影響が分かり、NRTAでの核物質測定の不確かさの低減につながります。

2015年3月、NRDの原理実証実験をEC-JRCのGeelサイトにて行いました。測定試料は、模擬核物質や構造材、制御棒に使われる複数の物質の中から、国際原子力機関(IAEA)などの第三者が私たち測定者に分からないよう選択し、容器に封入したものが用いられました。実験の結果、封入された模擬核物質のタングステン(W),ニオブ(Nb)及びロジウム(Rh)や構造材を代表するニッケル(Ni)を同定(図4-6)するとともに、2%以下の精度で核物質の量を測定できることを実証しました。

本研究は、文部科学省核セキュリティ補助事業の一環として実施され、第48回日本原子力学会賞技術開発賞を受賞しました。現在、NRDの技術を高度化することで、使用済核燃料や再処理核燃料などにも適用できる技術の開発に取り組んでいます。



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