4-5 ウランの原子価に応じた発光を追跡する

−発光寿命が短い化学種の時間分解型レーザー誘起発光分光計測−

図4-11 極短パルスを励起光としたレーザーシステム外観

図4-11 極短パルスを励起光としたレーザーシステム外観

再生増幅器付きチタンサファイアレーザーに高感度超高速CCDカメラを検出器に用いて、時間分解発光スペクトルを取得します。

 

図4-12 IV価ウラン化合物の発色と発光

図4-12 IV価ウラン化合物の発色と発光

緑色のIV価ウラン化合物(左)は、紫外光(365 nm)照射下において黄緑色を帯びた白色に発光します(右)。

 

図4-13 UI4の[emim][SCN]中における時間分解発光スペクトル

図4-13 UI4の[emim][SCN]中における時間分解発光スペクトル

紫外光パルスを照射すると、まず短寿命のU4+が強く発光し(観測時間0〜10ns)、その後、長寿命のUO22+が発光することが分かります(観測時間1〜10μs)。

 


使用済燃料の直接処分に関する研究では、主な構成成分であるウラン(U)が、環境中でどのように存在するかを知る方法の確立が課題です。Uは原子価が環境に応じて異なります。Y価ウランは化学的に最も安定で、環境中の存在形態で大部分を占めます。Y価ウランは液体中で酸素と結合し、ウラニルイオン(UO22+)として存在し、紫外線を当てると強く発光するため、この光を分析することで存在状態を知る研究が広く行われています。地下水など還元雰囲気の環境では、主に、UはY価のウラナスイオン(U4+)として存在するので、この U4+の状態分析が重要になります。溶液中のU4+の状態分析では、一般に紫外〜近赤外領域の吸収スペクトルを測定しますが、その発光強度は弱く、発光寿命も短いために、測定は容易でありません。そのため、U4+の発光スペクトルについてはUO22+に比べて情報が少なく、環境中の液性で混在する二つの原子価のUの同時観測は、従来の分光蛍光光度計による測定は難しいのです。

そこで私たちは、明るい光源を用いて、発光分光法を改良することで、U4+に適するシステムができると考え、最先端のレーザーを駆使した装置開発を行っています。短寿命計測を可能にするために、約100フェムト秒の極短パルスを励起光とし、高感度な信号増幅器を搭載した超高速CCDカメラを検出器とする時間分解型レーザー誘起発光分光システムを構築しました(図4-11)。これにより溶液内の化学状態に関する分光データベースの拡充を図っています。

W価ウラン化合物の発光を調べるために、透明で分光測定に適する1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナト([emim][SCN])という液体に四ヨウ化ウラン(UI4)を溶解しました(図4-12)。その結果、U4+の発光データ取得に成功し、Y価とW価のウラン化合物の混在した試料の発光スペクトルは、パルス照射後の経時変化によって、短寿命のU4+(18.6 ns)と長寿命のUO22+(35.7 μs)に分けて観測できることを明らかにしました(図4-13)。

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(No.24561046)「有機ウラン骨格形成を利用したイオン液晶の合成」、平成26年度 物質・デバイス領域共同研究拠点 一般研究共同研究課題(課題番号2014139)「アクチノイド四価化合物の分光的研究」の成果の一部です。



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