4-6 微量イオンを選択捕集する小型分離カートリッジ

−難測定核種分析効率化のための高性能分離材料の開発−

図4-14 小型分離カートリッジ(TEDAカートリッジ)の外観と構造

図4-14 小型分離カートリッジ(TEDAカートリッジ)の外観と構造

TEDAカートリッジには、水が浸透しやすい微細な孔構造を持つ高分子材料が充てんされています。この材料の細孔表面にイオン交換基(TEDA)が高密度に存在し、高効率分離を実現しています。

 

図4-15 電子線グラフト重合を利用したTEDAカートリッジの作製

図4-15 電子線グラフト重合を利用したTEDAカートリッジの作製

電子線照射によって基材の細孔表面に活性点を作り、GMAの重合反応を起こして細孔表面に高分子鎖を成長させます。HClによる反応を介し高分子鎖とTEDAを結合させることで、イオン交換機能が付与されます。

 

表4-1 TEDAカートリッジ及び市販材料による使用済燃料試料中237Npの分離性能比較

237Npを含む試料である使用済燃料溶解液を用いてTEDAカートリッジと市販材料における237Np分離性能を比較しました。TEDAカートリッジでは、市販材料を用いた場合の10倍の速度で通液しても市販材料と同等以上の性能を示すことが実証されました。

表4-1 TEDAカートリッジ及び市販材料による使用済燃料試料中237Npの分離性能比較
拡大図(81KB)

 


放射性核種の測定には、一般に、α線,β線,またはγ(x)線を計数する放射線測定器、若しくは質量ごとの原子の個数を測定する質量分析計が用いられます。γ線を測定する場合は、ほぼ前処理なしに測定・定量が可能です。しかしながら、α線若しくはβ線測定では、スペクトル干渉要因となる共存核種を化学分離する必要があります。また、質量分析においても、同重体などの測定妨害元素を化学分離します。化学分離は多大な労力を要するため、分離操作や時間を短縮することは、分析者の負担軽減につながるとともに迅速な分析結果取得を可能にします。

そこで本研究では、化学分離の効率化を目的として、小型分離材料(TEDAカートリッジ)を開発しました。このカートリッジには、微細な孔構造(平均細孔径:1.0 μm)を持つ直径5.9 mm,厚さ3.0 の高分子材料が充てんされています。高分子材料の細孔表面に、1分子内に二つのイオン交換基を持つトリエチレンジアミン(TEDA)を高密度に導入することによって、高効率分離を実現しました(図4-14)。ここでは、TEDAの導入法として、高分子表面の化学修飾に用いられる電子線グラフト重合法を利用しました(図4-15)。この技術により、多孔性高分子基材の細孔表面全体に、均一にTEDAを導入することが可能となりました。

開発したTEDAカートリッジの実用性を確認するため、難測定核種の一つである237Npの分析に適用しました。237Npは、原子炉内反応によって生成する長寿命核種であり、一般に、α線測定器若しくは誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)によって測定します。ここでは、長寿命核種の測定に有利なICP-MSにおける測定前処理を想定し、237Npを含む試料として使用済燃料溶解液を用いてTEDAカートリッジの分離性能を評価しました。

TEDAカートリッジは、市販材料(陰イオン交換樹脂)を用いた場合の10倍の速度で通液しても237Npを高回収率で分離でき、かつ優れた共存元素除去率を示しました(表4-1)。また、TEDAカートリッジの体積は市販材料の約1/13であり、総通液量が少なくて済むため、分析時間の大幅な短縮だけでなく、分離廃液の減量化にもつながりました。

TEDAカートリッジの作製技術は、特定のイオンを吸着する性質を持つ様々な分子に応用可能であり、分離対象に応じて適切な分子を高分子材料に導入することで、237Np以外にも多くの核種分析への適用が期待されます。



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