11-5 高放射性廃液中に含まれる微量プルトニウムを測定する

−吸光光度法を利用した簡便な現場査察手法を開発−

図11-10 光ファーバー式分光光度計システム

図11-10 光ファーバー式分光光度計システム

対象とする試料は、核分裂生成物を含むため、高い放射能レベルを有しております。そのため、試料は、遮へいを施した分析セル内で遠隔操作により取り扱う必要があります。そこで、遠隔による操作性及び耐放射性を考慮した測定試料セル(試料を入れて光を透過させる場所)を設計・製作し、分析セル内に設置し、外部に設置した分光光度計と光ファイバーによって接続しました。

図11-11 高放射性廃液試料の吸収スペクトル

図11-11 高放射性廃液試料の吸収スペクトル

測定試料にネオジム(Nd)という非放射性の元素を既知量添加し、このNdとPuの吸光度の比を利用しPu濃度を求める方法を考案しました。試料には、もともと核分裂性生成物としてNdを含んでいるため、測定試料のNdとPuの吸光度比の測定を行い補正します。

使用済燃料は、再処理施設で化学的に処理し、ウラン(U)やプルトニウム(Pu)を分離・回収します。この過程で発生する高放射性の廃液(HALW)の中には、微量ではありますがPuが含まれています。Puは保障措置上重要な物質であり、厳密な管理が必要とされています。

現在、保障措置のためのHALW中のPuの分析は、分析試料を国際原子力機関(IAEA)の保障措置分析所(オーストリア)へ輸送して測定が行われるため、輸送等に要する時間を含めると、IAEAにおいて分析結果が得られるまでに数ヶ月を要するといった欠点がありました。また本分析には、高度な分析技術が必要とされる同位体希釈質量分析法(IDMS)が適用されていることから、分析工程が煩雑でした。そこで、この問題点を解決するため、操作が簡便で、分析試料の輸送を必要とせず、現場での迅速な測定が期待できる、吸光光度法の適用を図りました。

本研究において、図11-10に示す測定システムを使用し、保障措置分析としての信頼性を高めるため、測定試料に既知量のネオジム(Nd)という非放射性の元素を添加し、このNdとPuの吸光度の比を利用してPu濃度を求める方法を考案しました。図11-11は、測定試料にNdを添加した試料と添加しない試料の吸収スペクトルを示しています。この方法では、添加したNdを測定機器や分析手順の健全性を管理するための標準物質として利用することができるため、分析値の信頼性も高めることが可能となります。

本法によるHALW試料中のPu濃度の測定と、従来法であるIDMSによる測定との比較において、濃度比は各試料とも、0.91〜1.10の範囲であり、本法による分析値と、IDMSによる分析値は良好に一致する結果が得られました。

また、これまで、分析結果を得るまでに輸送を含め数ヶ月を要していたものが、簡便な本法を用いることにより約4時間で分析が可能となりました。そのため、査察官が現場で分析結果を得ることが可能となり、検認分析の適時性も確保することができました。

以上の結果より、本法はHALW中のPuの保障措置のための分析法として適用できることが分かりました。また実使用に供する前のIAEA、文部科学省立会いによる試験を実施し、本法の有効性が確認され、東海再処理施設においてHALWのPuの保障措置分析法として採用されました。

本件は、IAEAに対するサポートプログラムの一環として実施したものです。


●参考文献
Taguchi, S. et al., Determination of Plutonium in Highly Radioactive Liquid Waste by Spectrophotometry Using Neodymium as an Internal Standard for Safeguards Analysis, 2006, JAEA-Technology 2006-041, 58p.


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