1-10 サイクル全体を考慮した世界初の安全評価手法を開発

−高速増殖炉サイクルの確率論的安全評価(PSA)研究−

図1-24 FBRサイクルにおける放射能の内訳

図1-24 FBRサイクルにおける放射能の内訳

 

図1-25 先進湿式法システムにおける公衆の年間致死ガン発生確率推定結果の異常事象による内訳

図1-25 先進湿式法システムにおける公衆の年間致死ガン発生
確率推定結果の異常事象による内訳

 

図1-26 PSAのFBR冷却系概念設計への貢献
拡大図(106KB)

 

図1-26 PSAのFBR冷却系概念設計への貢献


高速増殖炉(FBR)サイクル実用化戦略調査研究のフェーズIIにおいて概念設計を進めたFBR、使用済燃料再処理施設及び新燃料製造施設を対象に、FBRサイクル全体としてリスクをバランスよく抑制することにより安全性を確保することを目指して、系統的なリスクの分析を行いました。

まず、電気出力150万kWのFBR11基及びこれらの燃料処理におおむね相当する年間処理量200tHMの燃料サイクル施設1施設から成るFBRサイクルを想定して、各施設に内蔵される放射性物質の内訳を試算したところ、図1-24のように燃料サイクル施設内の放射能(合計約5×1018Bq)はFBR1基(約1000×1018Bq)の約1/200であることがわかりました。次に、湿式燃料再処理施設の溶液系を対象に確率論的安全評価(PSA)手法を適用し、放射性物質の施設外への異常放出による公衆のリスクを簡便かつ包括的に分析・評価したところ、図1-25に示すように安全設計に当たって設定したリスクの目標値を下回る。見通しを得ると共に、臨界、火災の寄与の小さいことが確認できました。このようなFBRの燃料サイクル施設を対象としたリスクの評価は世界でも初めての試みであり、評価モデル及びデータの整備は今後も継続的に進めていくことが必要と考えています。

一方、ナトリウム冷却FBRについては、炉心の著しい損傷がリスクに支配的な要因になると判断し、これまでに蓄積してきたナトリウム冷却FBRでの機器の運転・故障経験に基づくPSAにより複数の候補概念に対して炉心損傷の頻度を推定しました。特に、概念設計段階では、今後詳細な設計や開発を進めるべき基本的な設計概念の選定の妥当性を確認することが求められます。このため、安全性の観点からは、炉心損傷の頻度に対する抑制目標を、現状の知見の範囲で、より確実に達成できると期待される設計概念を選択することが重要となります。本研究を通じて、冷却系の複数の候補概念の中からより適切な概念を選定することができました(図1-26)。


●参考文献
日本原子力研究開発機構, 高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究 フェーズII技術検討書, 2006, JAEA-Research 2006-042, p.1807(付属CDROM中), 及びJAEA-Research 2006-043, p.1327(付属CD-ROM中)


| | | | |