2-3 安全評価に必要な信頼性の高いデータベースをどのように整備するか

−核種移行データベースの開発−

図2-5 核種移行データベースの表示例
拡大図(193KB)

図2-5 核種移行データベースの表示例
(収着データベースにおけるデータ検索の流れ)


放射性廃棄物の地層処分の安全評価では、地下水により放射性核種が廃棄体から溶出し、人間の生活環境に運ばれるという「地下水シナリオ」に基づくことを基本としています。この評価のためには、溶出した放射性核種の地下水中での溶解度、廃棄体周辺に設置される粘土材料(緩衝材)や岩石への収着分配係数及び拡散係数などの設定が必要となります。私たちは、この設定作業に必要な基盤情報として、熱力学、収着、拡散の各データベースで構成される核種移行データベースの整備を進めています。このうち、熱力学と収着のデータベースは既にホームページ(https://migrationdb.jaea.go.jp/)で公開されています1)

熱力学データベースには、溶解度積や錯生成定数等が収納されており、安全評価上重要な元素の溶解度計算などができます。また、鉱物の熱力学データも収納されていることから、地下水水質形成過程や緩衝材の長期安定性の評価などにも利用されます。現在は、“我が国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性−地層処分研究開発第2次取りまとめ−”に向けて整備したデータベースや国際共同プロジェクトで開発されたデータベースなどが、様々な地球化学計算コードに対応した形で提供されています。しかしながら、信頼性の高い値を決定するには更なるデータの充足が望まれるものもあり、原子力機構をはじめとして、各国の研究機関においてデータ取得のための実験的研究やデータを推定するための理論的研究が進められています。今後、これらの最新情報を評価した上で、2010年頃を目標として新たなデータベースの構築を計画しています。

収着データベースには、粘土材料や岩石への収着試験の結果が試験条件と共に収納されており、現在21,061件のデータが登録されています。このシステムでは、固相の種類や試験条件での収着分配係数の検索ができるほか、簡易な図示機能も有しています。このシステムを利用すると、想定される収着分配係数の範囲や環境条件への依存性の把握などを比較的容易に行うことができます。現在、最新データの登録を継続すると共に、個々の収着データの信頼度評価を実施しています。

拡散データベースは、我が国の岩石や粘土材料を対象とした拡散係数データが収納されています。現在は技術報告書として公開されているのみですが、2006年度中にデータの更新を行いホームページで公開する予定です。

このように安全評価の基盤情報となる核種移行データをデータベースとして整備、公開することで、データの利用価値を高めると同時に透明性を確保してきました。今後は、上に述べたような整備作業を進めると共に、より多くの皆様に利用していただき、ユーザーの声を反映していくことを考えています。


●参考文献
1)笹本広ほか, 核種移行データベースの利用環境整備の現状, 2005, サイクル機構技報(28), JNC TN1340 2005-002, p.27-33.


| | | | |