2-9 坑道掘削が周辺地下水に与える影響の把握

−大規模地下施設建設が周辺環境に与える影響−

図2-16 瑞浪超新地層研究所周辺の地下水観測地点

図2-16 瑞浪超新地層研究所周辺の地下水観測地点

左図に研究地域の航空写真とボーリング孔名・配置、右図に各ボーリング孔における採水地点を示します。

 

図2-17 解析により抽出された端成分地下水の混合率(図2-16右側の断面:研究所周辺の分布を表示)

図2-17 解析により抽出された端成分地下水の混合率
(図2-16右側の断面:研究所周辺の分布を表示)

表層水と同等の化学組成を持つ端成分地下水と研究所深部で観察できるNa-Ca-Cl型水質の端成分地下水の混合率を表示しています。

我が国においては、原子力発電で生じた使用済燃料の再処理工程で発生する高レベル放射性廃棄物を、深度300m以深の深い岩盤中に地層処分することになっています。地下深部に、このような大規模な処分施設を建設する場合、また、埋め戻した場合、施設周辺の環境に様々な変化が生じると考えられます。例えば、施設内に流入する地下水を排水することにより、地下水面の低下とともに、地下水の流れ方や化学組成が経時的に変化していくことが予想されます。

本研究では、大規模地下施設の建設段階での周辺地下水の長期的化学変化を定量的に評価する手法を構築することを目的として、地下深部の地質環境を学術的に研究するために建設が進んでいる瑞浪超深地層研究所(図2-16)周辺において、主成分分析に混合とマスバランス計算を組み合わせた手法を併用して、建設による擾乱が起こる前の地下水の水質分布状態とその水質形成プロセスに関する解析を行いました。解析の結果、地下水は主に4種類の端成分地下水(表層水、Na-Ca-HCO型地下水及び研究所深部の濃いNa-Ca-Cl型地下水と研究所浅部の薄いNa-Ca-Cl型地下水)の混合とイオン交換反応、鉱物の溶解・沈殿等の水−岩石反応により形成されていることが明らかになりました。また、研究所の周囲では、主に混合により地下水の水質が形成されていて、端成分地下水の混合割合を指標として、地下水の水質を定量的に表現できることが示されました(図2-17)。

そこで、研究所の建設前段階から建設途中の深部地下水の化学組成の分布を定期的に観測し、その変化について定量的な解析を試みました。その結果、建設中の坑道の周囲においては、数十〜数百mの範囲で水質が変化し、時間の経過と伴にその範囲が広がっていくことが判りました。これらの変化は、地下坑道への地下水の流入とその排水によって、周辺地下水の地下水流動状態が変化した結果と考えられます。

今後、地下研究施設の建設過程で、このような解析を適宜実施することにより、地下水の化学組成の変化を経時的に追跡することができ、本研究で行った解析手法は、大規模地下施設を建設した時の地球化学的影響について評価するための有効な手法の一つであると考えられます。


●参考文献
阿島秀司ほか, 多変量解析による瑞浪超深地層研究所周辺の地下水化学モデルの構築,応用地質, vol.47, 2006, p.120-130.


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