3-10 世界に先駆けてITER超伝導コイル用線材を開発

−高性能Nb3Sn超伝導線材の量産に成功−

図3-21 Nb3Sn線材の断面(ブロンズ法)

図3-21 NbSn線材の断面(ブロンズ法)

ブロンズ(銅スズ合金)としてスズを配置します。ブロンズ中のスズ濃度の向上により性能が向上しました。

図3-22 Nb3Sn線材の断面(内部拡散法)

図3-22 NbSn線材の断面(内部拡散法)

スズのまま線材内に配置します。モジュールを小型化しかつニオブとスズの割合を最適化することで、目標を達成しました。

図3-23 試作したNb3Sn線材の性能

 

図3-23 試作したNbSn線材の性能

最も重要な性能は、臨界電流密度とヒステリシス損失です。ブロンズ法、内部拡散法共に仕様を満たすことができました。

国際熱核融合実験炉(ITER)では、高温のプラズマの立ち上げや閉じ込めのため、12〜13Tの強磁場を必要とします。この強磁場を発生するために高性能のNbSn超伝導線材が多量に必要です。その性能として、超伝導線材に流せる電流の限界(臨界電流密度)が高いだけではなく、磁場の変動により発生する熱(ヒステリシス損失)が少ないことが要求されています。これは相反する要求で、臨界電流密度が高くなるとヒステリシス損失が必然的に大きくなります。これまでは片方だけ満たす線材は存在しましたが、両立する線材はなく、新たな開発が必要でした。

NbSn線材の製法には、ブロンズ法と内部拡散法があります。ブロンズ法は、銅スズ合金であるブロンズを母材としてその中にニオブを埋め込み、熱処理(650℃、200時間)をしてNbSnを生成する製法です(図3-21)。もともとヒステリシス損失の小さいブロンズ法では臨界電流密度の向上が課題であり、その要因は線材内のスズの量を増やせないことでした。近年、加速器用NbSn素線の開発において品質の良い高スズ濃度のブロンズができるようになり、核融合用でもこれを採用してブロンズ法NbSn線材の臨界電流密度を向上させることができました。

一方の内部拡散法は、スズとニオブを線材内に並べて配置する製法です(図3-22)。スズを増やすことで、臨界電流密度は高くできますが、同時にスズ周辺のニオブ・フィラメントが熱処理時に結合して環状となり、ヒステリシス損失が急激に増加してしまいます。一個のスズ・コアと多数のニオブ・フィラメントからなる六角形の単位をモジュールと呼びます。今回このモジュールを小型化し、ニオブとスズの割合を最適化することで、フィラメントが結合しても環の径と厚さの両方を軽減し、ヒステリシス損失の増加を抑えました。この結果、ヒステリシス損失を仕様値内に納めながら高い臨界電流密度を実現することができました。

両製法とも0.1トン級の量産を行った結果、図3-23に示すように臨界電流密度とヒステリシス損失に関するITERの仕様を満たすことが確認できました。ブロンズ法と内部拡散法で臨界電流密度の仕様が異なっていますが、運転条件(磁場12T、温度5.7K、歪み−0.76%)では同じ臨界電流密度となります。この成果は、他のITER参加極(欧州、米国、ロシア、韓国、中国)に先駆けるもので、これにより我が国はNbSn線材の調達では、ITERの参加極の中で最大の貢献をすることになりました。


●参考文献
Okuno, K. et al., From CS and TF Model Coils to ITER: Lessons Learnt and Further Progress, IEEE Transaction Superconductivity, vol.16, 2006, p.880-885.


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