4-4 ナノ微細孔内壁の化学修飾状態を蛍光で識別する新手法を創出

−イオンビームによる機能性高分子膜の創製技術の開発−

図4-10 イオン穿孔膜のナノ微細孔の内壁表面化学修飾による機能性薄膜の創製

図4-10 イオン穿孔膜のナノ微細孔の内壁表面化学修飾による
機能性薄膜の創製

イオンビームを利用すると、ナノレベルで孔の構造を制御したイオン穿孔膜が作製できます。このナノ微細孔内壁の特性を制御できる表面化学修飾法により、分子認識層、電解質層、触媒層などの形成が可能となり、分子センサー、燃料電池、ナノリアクターなどへの応用が期待できます。

図4-11 蛍光色素を利用したナノサイズ微細孔の内壁表面状態の直接観察方法

図4-11 蛍光色素を利用したナノサイズ微細孔の内壁表面状態の直接観察方法

ポリエチレンテレフタレート(PET)のイオン穿孔膜の微細孔内壁の親水性基に化学修飾反応により蛍光色素を結合させると、内壁表面の特性を親水性から疎水性へ変換することができます。この化学変換の程度を、微細孔内壁からの発光を蛍光顕微鏡観察することで直接識別することが可能となりました。

高分子膜にイオンビームを照射すると、ナノレベルで構造を制御したイオン穿孔膜が作製できます(図4-10)。このナノ微細孔内壁の化学構造と表面特性を制御する修飾技術(内壁表面化学修飾)を開発することで、燃料電池膜に必要な電解質層などの製作が可能となります。しかし、これまでは微細孔内壁の修飾状態を直接観察する手段がなく、孔内壁の化学反応を制御することは事実上できませんでした。そこで、内壁表面の機能化に適した親水性表面のアルキル化(疎水化)反応に着目し、蛍光色素を含むアルキル化試薬(蛍光試薬)を反応溶液に混ぜ込み、その溶液を微細孔に導入して内壁を化学修飾すると発光で反応の程度が識別できるとのアイディアを基に、蛍光顕微鏡を用いた微細孔内壁の修飾状態の観察技術の開発を行いました。

具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜にイオンビームを照射後、加水分解処理することでイオン穿孔膜を作製しました。このイオン穿孔膜の微細孔(直径:200nm)に、蛍光試薬を含む反応溶液を導入し、親水性の微細孔内壁をアルキル化(化学修飾)することにより、内壁表面を疎水化させました。蛍光顕微鏡観察の結果、化学修飾前のイオン穿孔膜では発光が確認できなかったのに対し、微細孔内壁が化学修飾されると、その位置に対応した蛍光スポットが観測できました(図4-11)。更に、孔の数や大きさの異なるイオン穿孔膜を化学修飾後、蛍光分析を行うと、蛍光及び励起スペクトルの強度は、微細孔内壁の表面積に比例して増加することが確認できたことから、この方法により化学修飾の程度についても推定できることが明らかになりました。

このように、反応溶液に蛍光色素を添加することで、イオン穿孔膜の微細孔内壁の化学修飾状態を直接観測する手法の開発に成功しました。この手法を利用すると、分子認識層、電解質層、触媒層などの効率的な機能制御が可能になることから、今後、分子センサー、燃料電池膜、ナノリアクターなどの開発が推進できると期待されます。


●参考文献
Maekawa, Y. et al., Chemical Modification of the Internal Surfaces of Cylindrical Pores of Sub-micrometer Size in Poly(ethylene terephthalate), Langmuir, vol.22, 2006, p.2832-2837.


| | | | |