4-5 海水ウランの捕集をコスト試算で裏づけ

−高性能金属捕集材による海水ウラン資源採取の検討−

図4-12 モール状のウラン捕集材を海域に係留する準備作業

図4-12 モール状のウラン捕集材を海域に係留する準備作業

ポリエチレンの繊維に放射線グラフト重合法により、海水中に溶け込んでいるウランとの親和性の高い化学構造を導入し、得られた繊維をモール状に編み上げてウラン捕集材を作製します。モール状捕集材は浮きを内蔵させているため、海底から立ち上げて、係留することができます。60日間係留したモール状捕集材は作業船で引上げ、吸着したウランを溶離します。

図4-13 捕集材の繰り返し使用回数のウラン捕集コストへの影響;(●)2g-U/kg- 捕集材、(■)4g-U/kg- 捕集材、(▲)6g-U/kg- 捕集材

図4-13 捕集材の繰り返し使用回数のウラン捕集コストへの影響;
)2g-U/kg- 捕集材、()4g-U/kg- 捕集材、()6g-U/kg- 捕集材

海水から高性能金属捕集材によりウラン資源を採取した場合の価格です。

我が国における原子力発電は、総発電電力の約34%を占めますが、発電に必要なウラン燃料はその全量を輸入に頼っています。ウラン資源として海水ウランの捕集が可能になれば、我が国のエネルギーセキュリティはより頑強なものになり、理想的な核燃料サイクル体系を完成するまでの時間的余裕を与えることができます。海水中のウラン濃度は非常に低く、海水1トン中のウラン溶存量は3.3mgと極微量ですが、世界の全海水中の総量を計算すると45億トンになり、陸域でのウラン埋蔵資源の1000倍に匹敵します。また、日本近海を流れる黒潮により運ばれるウラン量は、年間520万トンと試算されており、我が国の原子力発電に必要とされるウラン資源は、このうちの0.2%を捕集すれば賄うことができます。

私たちは、放射線グラフト重合法により作製した捕集材を用い、これを海面に浮かせた生簀から垂下する捕集方式で、青森県むつ関根浜沖合いで海域試験を行い、海水からウランを捕集する技術を開発しました。更に、ウランを捕集するコストを下げるためには、海底から立ち上げ係留できる捕集方式がより有効であることがわかりました。そのため、モール状捕集材(図4-12)を開発して、沖縄海域で捕集試験を行い、この結果に基づいて海水ウランの捕集コストを試算しました(図4-13)。年間のウラン捕集規模を金属ウラン換算で1200トン/年(原子力発電所約6基分に相当)と設定しました。ウラン捕集材の海水ウラン捕集性能が60日の海水への浸漬で2g-U/kg-捕集材、捕集材の繰り返し使用回数が6回でのコスト試算では、捕集材の製造、係留・回収、ウランの溶離・精製を合計すると、1,053億円/年となります。この経費をウランの年間捕集量1200トンで割ると、ウラン1kgあたりのコストは88千円となりました。捕集材の性能向上に関する研究開発を進め、6g-U/kg-捕集材、捕集材の繰り返し使用回数が20回以上の性能が達成された場合は、15千円程度まで下がります。この価格は採掘可能なウランの最高値と同じ程度です。沖縄海域で行ったウラン捕集試験では4g-U/kg-捕集材の性能が達成できる見込みが得られており、この繰り返し使用が18回目まで達成できるとしますと、現状で到達可能性の高いコストは25千円です。この場合、海水からウランを採取するために必要な初期投資額は1,077億円となります。これは100万キロワット級原子力発電所の建設費の約1/3程度です。


●参考文献
玉田正男ほか, モール状捕集システムによる海水ウラン捕集コスト試算, 日本原子力学会和文論文誌, vol.5, no.4, 2006, 印刷中.


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