5-4 燃料を長期間照射しても冷却材喪失時の安全性を確保できるのか?

−燃焼の進んだ軽水炉燃料のLOCA時挙動評価−

図5-7 LOCA模擬試験

図5-7 LOCA模擬試験

石英管内に水蒸気を流し、電気炉を用いて試験燃料を1200から1500Kの温度範囲まで加熱します。一定時間加熱した後、試験燃料の下端より急冷水を導入します。右下の写真は、昇温中に破裂し、急冷時に破断した照射済被覆管の写真です。

図5-8 被覆管酸化割合と初期水素濃度に関する破断マップ

図5-8 被覆管酸化割合と初期水素濃度に関する破断マップ

未照射被覆管を用いた試験結果(破断▲、非破断△)は、それぞれの酸化割合が一定値(破断限界)以上になると破断しやすくなることを示しています。照射済被覆管の破断()及び非破断の結果()は、調べた燃焼度範囲において、同等の水素濃度を持つ未照射被覆管に比べ照射済被覆管の破断限界が著しく低下することはないこと、当該燃料の破断限界は基準値(15%)以上であることを示しています。

軽水炉では、燃料の長期利用(高燃焼度化)が進められています。軽水炉燃料の高燃焼度化は、資源の有効利用や放射性廃棄物発生量の低減の点で有益ですが原子炉の安全性を損なうものであってはなりません。私たちは、事故条件を模擬した試験を行い高燃焼度燃料の事故時挙動や安全性を調べています。

原子炉の安全設計にあたって想定される事故のひとつに、原子炉から冷却材が流出してしまう冷却材喪失事故(LOCA)があります。LOCA時には燃料温度が上昇しますが、数分後には非常用炉心冷却系(ECCS)の作動により原子炉内の水位は回復し、高温になった燃料は冷却されます。燃料は、二酸化ウラン・ペレットとそれを密封するジルコニウム合金製の管(被覆管)からなります。燃料温度が非常に高くなり高温にある時間が長くなると、被覆管は著しく酸化し延性が低下して、冷却時の熱衝撃により破断する可能性があります。被覆管破断により燃料の破片が原子炉下部に多く堆積した場合、熱の除去が困難になるかもしれません。このような状況に至るのを防ぐために、LOCA時においても被覆管の最高温度酸化される厚さの割合がそれぞれ1200℃及び15%を超えてはならないとする安全基準(原子力安全委員会策定・ECCS性能評価指針)が定められています。この指針は、未照射被覆管を用いLOCA条件を模擬した実験により得られた燃料の破断条件に基づいています。また、原子炉で長期間照射された燃料のLOCA時挙動に関する知見が非常に限られていました。そこで、LOCA時に予想される条件をホットセル内で模擬できる装置を開発し(図5-7)、加圧水型軽水炉(PWR)で照射した燃料(燃焼度39〜44GWd/t)から採取した被覆管に対する試験を実施し、LOCA時の燃料挙動や熱衝撃による被覆管破断に関する貴重なデータを取得しました。得られた結果の例を図5-8に示します。原子炉において長期間照射された被覆管の破断条件は、同等の水素濃度を有する未照射被覆管と同等であることが分かりました。また、調べた燃焼度範囲においては、長期間の照射によってもLOCA時の安全性が著しく低下することはないことも明らかになりました。得られた成果は、国が行う安全審査に役立てられます。


●参考文献
Nagase, F. et al., Embrittlement and Fracture Behavior of Pre-Hydrided Cladding under LOCA Conditions, Proceedings of the 2005 Water Reactor Fuel Performance Meeting, Kyoto, Japan, 2005, p.668-677.


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