5-5 事故時燃料ふるまいコードRANNSの開発

−破損メカニズムの解明と破損予測−

図5-9 RANNS解析による被覆管の内外面の温度分布と図5-10 FK-10実験の解析における被覆管の内外面の周方向及び軸方向の応力
拡大図(129KB)

図5-9(左) RANNS解析による被覆管の内外面の温度分布

#2、#3、#5は内外面の間にあるリング要素の温度を示します。パルス入力に対して内面は外面より急速に温度が上昇します。PCMI破損時刻は測定されたものです。破損時の内外面の温度差は400℃ 程度にまで達しています。

図5-10(右) FK-10実験の解析における被覆管の内外面の
周方向及び軸方向の応力

被覆管内面は熱膨張により引張り応力が緩和され、外面の応力が相対的に高くなります。破損は、被覆管がわずかに塑性変形した時刻に生じており、低歪み破損というメカニズムによることが分かりました。

軽水炉の高燃焼度燃料の反応度事故時及び冷却材喪失事故時における燃料の熱的・力学的ふるまいを解析し、実験データや安全評価基準の妥当性を裏付ける基盤ツールとして、また商用炉での事故ふるまいを予測評価するツールとして、通常時の燃料ふるまい解析コードFEMAXI- 6の開発経験を参考としつつRANNSコードを開発しました。

RANNSコードは、1本の燃料棒の事故条件(急速な過渡条件)での熱的・力学的変化を解析します。その目的の第一は、事故を模擬して行われる 実験で得られた観察結果やデータの背後にあるメカニズムを分析し、限られた実験データ及び燃料棒の破損・非破損のしきい値の妥当性を裏付け、安全評価の信 頼性を増すことです。

高燃焼度燃料では、ペレットと被覆管の間のギャップが閉じ、ボンディング層と呼ばれる化学的結合層ができています。また被覆管は照射や水側酸化 (水素吸収)により延性が低下しています。こうした状態で、反応度事故において急激な出力上昇が加わると、ペレットの熱膨張が直接被覆管を押し広げるの で、被覆管には厳しい負荷がかかります。RANNSのモデル設計においては、こうしたPCMI(ペレット被覆管機械的相互作用)による破損に焦点を絞り、 燃料棒の温度・応力・歪み分布などを正確に評価するために、被覆管とペレットに有限要素法の多層リング要素を与えました。

高燃焼度BWR燃料を用いた、NSRR(安全性研究炉 )における反応度事故模擬実験の解析結果では、パルス入力によって被覆管の内面の温度は急速に上昇しますが外面の温度上昇は極めて遅れ(図5-9)、その結果、内面 ほど大きな熱膨張が生じることが明らかになりました。このためPCMIによる被覆管の引張り応力が内面では大きく緩和され、相対的に外面の引張り応力が非常に大きくなるという解析結果を得ました(図5-10)。

NSRRにおける多くの実験では、PCMIにおける破損クラックは外面から生じていますが、この解析はそうした観察事実を初めて定量的解析に基づいて合理的に説明したといえます。 また図5-10に破線で示すように、被覆管には軸方向応力も加わり、2方向からの引張り応力で破損に至ることを予測しました。

以上の解析により、RANNSコードは高燃焼度燃料の反応度事故時のふるまい、特にPCMIの解析に有効であり、実験データの定性的な解釈にとどまっていた従来の状態から、定量的な解析評価へと進むことを可能にするコードであることが明らかになりました。

また、RANNSは想定条件における燃料ふるまいも解析できます。反応度事故時の出力上昇が緩やかだったり、上昇幅が小さい場合には、被覆管の温度勾配は緩和され、応力も低下し、破損しない可能性があります。これに対し、解析によりこうした被覆管状態を予測し、破損−非破損を決めるしきい条件を評価することができます。

今後の展望として、以上の成果をベースに、実験解析の対象をさらに広げると共に、破損予測機能の確立を目指します。またRANNSは冷却材喪失 事故条件においても、被覆管の高温酸化やクエンチ時の急速な温度変化時の熱応力などを計算する機能を持ちますので、再冠水時の燃料棒ふるまいを調べる実験 の解析にも適用を拡大していきます。


●参考文献
Suzuki, M. et al., Analysis on Split Failure of High Burnup BWR Rods in Reactivity-Initiated Accident Conditions by RANNS Code, Nuclear Engineering and Design, vol.236, 2006, p.128-139.


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