5-9 経年劣化が進行した配管が地震で壊れる確率は?

−確率論的破壊力学による発電用原子炉機器の高経年化評価−

図5-20 地震荷重を受ける経年配管の破損確率評価の流れ
拡大図(129KB)

図5-20 地震荷重を受ける経年配管の破損確率評価の流れ

地震動の強さとその発生頻度の関係(地震ハザード)と、経年劣化を考慮した確率論的破壊力学解析に基づく破損確率から、長期間使用した配管等の経年機器に対する構造健全性を評価します。

国内で初期に建設された原子力発電所では、既に30年を超える運転が行われています。運転年数が長期化した経年プラントでは、応力腐食割れ(SCC)や減肉等の経年劣化による機器の構造健全性の低下、すなわち高経年化への対策が必要です。また、原子炉施設の耐震設計審査指針の見直しが進められており、地震時の安全性評価が重要な課題となっています。経年プラントの安全性を適切に評価する上では、機器の構造健全性に関して、経年劣化の程度とばらつき、地震荷重の不確かさ等を考慮することが重要であり、このためには確率論的破壊力学(PFM)解析手法が最も合理的な手法です。

私たちは、経年劣化の知見とPFM解析に基づいて、経年配管に地震荷重が作用する場合の破損確率評価手法、及び地震時の安全性評価に関連して地震動強さの予測手法を開発してきました。従来これらの手法は独立したものでしたが、これらを統合して、プラント敷地周辺の地震発生確率を考慮し、経年劣化した配管に地震荷重が作用する場合の破損確率の評価手法を開発しました。

まず、敷地周辺における過去の地震に関する情報と、地震が発生した場合の敷地における地震動強さ(最大加速度等)の予測値を用いて、地震動強さに応じた地震発生頻度を評価します。地震動強さの予測には、断層の破壊過程や地殻内の伝播特性を考慮した、断層モデルによる予測手法を取り入れています。

次に、様々な大きさの地震荷重に対する配管の破損確率について、PFM解析手法を用いて評価します。PFM解析では、経年劣化事象としてSCCや疲労き裂進展を対象とし、き裂の発生や進展速度、溶接残留応力の大きさ、材料強度等について、不確かさとばらつきを考慮します。また、地震荷重によるき裂進展評価を詳細に行う等の特徴を有しています。破損確率は、これらの確率変数を用いて、モンテカルロ法により評価します。この解析から地震動強さに応じた破損確率が得られ、地震動の発生頻度から求めた地震発生確率と合わせることで、経年配管の地震荷重に対する構造健全性が評価できます。

原子炉機器の地震時の健全性評価において、発生確率が極めて低くても、発生した場合に損傷を引き起こす可能性のある非常に大きな地震の発生とその影響を考慮することは意義があり、本手法はこれを可能にしました。

今後は、供用期間中検査の効果や検査精度を考慮した、より現実的な破損確率評価手法の開発や、規格・基準改訂への貢献を目指します。


●参考文献
杉野英治, 伊藤裕人, 鬼沢邦雄ほか, 地震動の不確かさを考慮した経年配管の構造信頼性評価手法の開発, 日本原子力学会和文論文誌, vol.4, no.4, 2005, p.233-241.


| | | | |