6-3 超重元素はどこまで存在するか

−重・超重核領域の原子核崩壊−

図6-4 各原子核における優勢な崩壊様式の理論予測
拡大図(213KB)

図6-4 各原子核における優勢な崩壊様式の理論予測

ある原子核において複数起こりうる原子核崩壊のうち、一番部分半減期の短いものがその原子核の優勢な崩壊様式となります。本研究でα崩壊、β崩壊、陽子放出、自発核分裂の四崩壊の部分半減期の理論計算を行い、全半減期が1ナノ秒(10−9s)以上と予測された核種について描いています。

原子核は陽子と中性子の複合体であり、その組合せで核種が定まります。現在までに3000核種ほどその存在が確認されていますが、理論的にはそれ以上の原子核が存在するとされています。原子核がどこまで存在しうるかというのは原子核物理研究にとって基本的かつ重要なテーマであり、特に陽子数(原子番号)114、中性子数184付近の原子核は、比較的長寿命で存在しうるという理論的予測が古くからなされており、この原子核の実験的合成に向けて現在世界中でしのぎを削っている状況です。

私たちは、巨視的模型+平均場理論計算を基にした、KTUY(小浦−橘−宇野−山田)原子核質量模型と呼ばれる手法を開発しました。これは、平均場理論計算部分を原子核の球形状態の重ねあわせで記述するという点が主な特徴で、これにより広い核種領域にわたり原子核質量を高精度で再現することが可能となりました。この質量模型を用い、原子核の質量エネルギー及び原子核の崩壊様式について、極めて大域的な核種領域にわたり計算を行い、その性質を調べました。図6-4はどの崩壊様式が主要かを示した計算結果です。陽子数(原子番号)114個、中性子数184個付近の長寿命性(数百年程度)を示したのと同時に、この領域以外にも比較的長寿命で存在しうる領域がある可能性を見いだしました。それは中性子数126付近の中性子欠乏側の領域及び中性子228付近の中性子欠乏側です(図中で岬のように縦に伸びている領域)。このような領域の存在の指摘は今回の計算ではじめて示されたものです。

原子核は中性子欠乏側では一般にクーロン力の反発力のため、陽子放出や自発核分裂の形で容易に壊れてしまいますが、中性子数が126、184、228では原子核の閉殻構造のために比較的安定に存在しうるのです。また、中性子数184以上の原子核についてもβ崩壊優勢核種の領域(青)が広く分布しており、原子核の存在領域が通常考えられたものより広く分布していることを示しました。


●参考文献
Koura, H. et al., Nuclidic Mass Formula on a Spherical Basis with an Improved Even-Odd Term, Progress of Theoretical Physics, vol.113, no.2, 2005, p.305-325.
小浦寛之ほか, 超重元素はどこまで存在するか−質量公式からみた重・超重核領域の原子核崩壊−, 日本物理学会誌, vol.60, no.9, 2005, p.717-724.


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