6-5 新奇なプルトニウム化合物超伝導体の超伝導状態解明

−核磁気共鳴(NMR)法で未知の超伝導を探る−

図6-8 PuRhGa5のスピンー格子緩和率(1/T1)の温度

図6-8 PuRhGaのスピンー格子緩和率(1/T)の温度依存

超伝導転移温度Tcのところで増大がないこと、Tc以下でT則に従うことから、新奇超伝導状態であることがわかります。PuRhGaの結晶構造は図のように正方晶です。

図6-9 2次元異方的(d波型)超伝導ギャップ、新奇超伝導ではこのようにギャップにノード(節)があり異方的になります。2枚の筒の間が超伝導ギャップを表します。

図6-9 2次元異方的(d波型)超伝導ギャップ、新奇超伝導ではこのようにギャップにノード(節)があり異方的になります。2枚の筒の間が超伝導ギャップを表します。


ウラン及び超ウラン〔ネプチニウム、プルトニウム〕化合物では、5f電子の強い電子相関が電子物性を支配するため、数々の特異な磁性や超伝導体が見いだされています。私たちは新奇超伝導体PuRhGaの単結晶を初めて作成し、その奇妙な超伝導状態を核磁気共鳴法(NMR)等を用いて明かにしました。超伝導状態の研究において、NMRのスピン−格子緩和率(1/T)の結果は特に重要です。通常型超伝導の理論が予言した、Tc直下で1/Tが急激に増大してからまた減少するコヒーレンスピークが実際に観測されたことが、この理論をゆるぎないものにしたことは良く知られています。ここでは69Gaの核四重極共鳴(NQR)をゼロ磁場下で観測しました。ゼロ磁場下の測定のため、Tc以下で混合状態による超伝導オーダーパラメーター分布がない利点があります。図6-8にNMRのスピン−格子緩和緩和の温度依存を示します。ここでまず重要なことは上記のコヒーレンスピークが見られず、Tc以下で1/Tは直ぐに減少していることです。このことにより超伝導ギャップが等方的超伝導ギャップを持たない非通常型の新奇超伝導状態であることが明かになりました。このような新奇超伝導と通常型超伝導の違いは超伝導状態での1/Tの温度依存にも現れます。通常型の場合、1/Tは指数関数で減少しますが、新奇超伝導の場合1/T〜Tnとべき乗型になります。実験結果ではこの指数nは〜3でした。この指数nに超伝導状態で開く対称性が反映されます。PuRhGaが2次元的な電子物性を持っていることも、臨界磁場の測定から明らかになっています。この実験結果はギャップのないところつまりノードがあるd波型ギャップを仮定し、結晶の不完全性による残留状態密度NがT=0Kでも残っているとしたモデルでよく実験結果をフィットできました。

このように私たちはPu化合物のもつ超伝導状態が従来にものとは異なった新奇ものであることを明かにし、さらにその新奇性の起源の解明を進めています。


●参考文献
Sakai, H. et al., Anisotropic Superconducting Gap in Transuranium Superconductor PuRhGa5: Ga NQR Study on a Single Crystal, Journal of Physical Society of Japan, vol.74, no.6, 2005, L1710-1713.


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