7-10 ISプロセス法による原子力水素製造に大きく前進

−セラミックス製大型硫酸分解器の試作に成功−

図7-24 硫酸分解器の鳥瞰図

図7-24 硫酸分解器の鳥瞰図

硫酸分解器は、高温のヘリウムガスにより濃硫酸(HSO)を沸騰蒸発させて三酸化硫黄(SO)と水蒸気(HO)に分解する反応器です。濃硫酸の沸騰蒸発に耐える材料として炭化ケイ素(SiC)セラミックスを見出し、毎時30m規模の水素製造試験プラント用硫酸分解器の構造概念を考案しました。

図7-25 試作した内部構造体

図7-25 試作した内部構造体

SiCブロック及びシール構造からなる内部構造体を試作し、製作性を確認しました。

将来のエネルギー源の多様化とエネルギー安定供給、更には地球環境保全の観点から、高温ガス炉と炭酸ガスを全く排出しないISプロセス水素製造技術の研究開発を世界のトップランナーとして進めています。ISプロセスは、ヨウ素(I)と硫黄(S)を原料である水と化学反応させ、高温ガス炉からの900℃程度までの熱を用いて水を分解して水素を製造する化学プロセスです。ISプロセスでは、濃硫酸やヨウ化水素などの腐食性の強い物質を高温高圧で循環させるため、工業プロセスに展開するうえで耐食性を有する材料を用いた機器の開発が課題でした。特に、腐食性が極めて強い濃硫酸を蒸発・分解させる硫酸分解器は、耐食性のみならず高温ガス炉からの高温ヘリウム(He)ガスによる加熱を効率的に行えるようにする構造概念の構築が懸案でした。

そこで、高温濃硫酸用材料の探索・試験を進め、炭化ケイ素(SiC)セラミックスが優れた耐食性を有することを明らかにしました。しかし、SiCで複雑な構造の大型の反応器を製作することは非常に難しいため、製作性を考慮して、Heガスと硫酸を対向流で熱交換させて蒸発・分解させる比較的単純な多孔円筒型ブロック構造とし、メタルガスケットシールを介してブロックを積み重ねて分解器を構成する新たな構造概念を考案しました。このとき、積み重ねたブロックはタイロッドで締め付けてブロック間のシール性を確保するようにし、セラミックスと金属部材の熱膨張負荷変動等を皿バネやベローズで吸収するようにしました。図7-24に毎時30m規模の水素製造試験プラント用硫酸分解器の構造概念を示します。この構造概念により、水素製造量の増加に対応して容易に分解器を大容量化できるようになりました。

更に、多孔円筒型SiCブロック及びシール構造からなる主要内部構造体の試作に成功し、考案した構造の製作性を確認しました(図7-25)。

この成果は、世界のISプロセス法の研究開発を先導し、高温ガス炉による原子力水素製造技術開発を大きく前進させた成果として、各国から高く評価されています。また、この技術は腐食性物質を取り扱う一般化学プラントなどの分野にも広く適用することできます。

なお、本研究における内部構造体の試作は、文部科学省からの受託研究「核熱利用システム技術開発」の成果の一部です。


●参考文献
寺田敦彦ほか, 熱化学水素製造法ISプロセスのための硫酸分解器の開発, 日本原子力学会和文論文誌, vol.5, no.1, 2006, p.68-75.


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