7-8 有害物質の処理や放射性廃棄物の有効活用に道

−固体を混ぜた水溶液の放射線誘起の反応により6価クロムの廃液処理を実現−

図7-19 放射線照射した固体による水溶液中の反応促進作用

図7-19 放射線照射した固体による水溶液中の反応促進作用の模式図

 

図7-20 放射線照射した水溶液中の6価クロムの吸収スペクトル

図7-20 放射線照射した水溶液中の6価クロムの吸収スペクトル

工場廃液や環境水の酸性度(pH)の条件で溶液に放射線を照射しても、溶液中の6価クロムはほとんど減少しません(a)が、この溶液に固体を添加すると、放射線照射で6価クロムが顕著に減少します(b)。

 

図7-21 6価クロムの処理スキーム

図7-21 6価クロムの処理スキーム

従来の処理法(a)は還元剤、酸、アルカリなどの薬品を大量に使うため、コストがかかり、二次処理が必要になるなどの問題を抱えていますが、新たな処理法(b)は薬品を必要とせず、簡便で環境にやさしい方法です。

酸化物など固体の微粉末を添加した媒体(液体や気体)に放射線を照射すると、固体を消費することなく媒体中のイオンや分子の反応が促進されること(図7-19)がありますが、この作用を応用して、6価クロムを効果的に処理する方法の開発に成功しました。6価クロムは金属表面のメッキ処理、顔料や染料の製造などの原材料として工業的に利用されていますが、体内への取り込みや粘膜への付着が容易で、発ガン性で人体に有害なため、環境への排出が制限されています。開発に当たっては、放射線のみで処理できない工場廃液や環境水の条件で、薬品を使わずに効率よく処理するかを追及しました。

新たに開発した方法は、従来の処理法に比べて(1)酸、アルカリなどの薬品を使わないため、二次処理や廃棄物を発生せずに環境への排出の基準を達成でき(図7-20)、(2)処理後のクロムが耐火レンガ、研磨剤、触媒などの有用な材料としてリサイクル可能であるため、クロムを環境へ放出しない、(3)簡素でメンテナンスが容易である、などの特長をもっています(図7-21)。

現在、これを実用化するため、地元の工場やメーカーと協力してメッキ廃液や汚染土壌など廃棄物の処理技術を開発しています。また、この方法に利用している固体による反応促進作用は、6価クロムと同様に社会問題となっているカドミウムや水銀といった有害金属や有害有機化合物などの処理、並びにクリーンなエネルギー源として期待されている水素の製造に対しても有効なので、これらを視野に入れた研究開発も同時に行っています。

ところで、この方法には放射線の発生源が不可欠です。現在はコバルト-60ガンマ線や電子線照射装置を用いていますが、将来的には“核のゴミ”として扱われてきた高レベル放射性廃棄物を用いれば、“廃棄物による廃棄物のため”の極めて循環性が高いプロセスが実現できると考え、このための研究開発にも取り組んでいます。

本研究内容は、日本学術振興会の科学研究費補助金の採択課題「放射線誘起触媒の探索とその非均質系における反応機構の解明」などの成果の一部です。


●参考文献
Nagaishi, R. et al., Radiation-Induced Catalytic Reduction of Chromium(VI) in Aqueous Solution Containing TiO2, Al2O3 or SiO2 Fine Particles, Radiation Physics and Chemistry, vol.75, no.9, 2006, p.1051-1054.


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