8-5 試薬を使用しない酸濃度分析法の開発

−導電率測定による硝酸プルトニウム溶液等の酸濃度分析−

表8-2 無限希釈における水素イオン等の当量電導度(25℃)

表8-2 無限希釈における水素イオン等の当量電導度(25℃)

 

写真8-1 導電率計の概要

写真8-1 導電率計の概要

導電率計は制御部と測定セルから構成されており、測定セルはグローブボックス内に設置しました。測定セルからの信号は、測定ケーブルを介して制御部のデジタル表示部に溶液の温度とともに導電率として表示されます。

図8-7 本法と従来法との比較分析の結果

図8-7 本法と従来法との比較分析の結果

本法と従来法による硝酸プルトニウム溶液等の酸濃度を分析した結果の比較です。図中の試料名のPは硝酸プルトニウム溶液(プルトニウム濃度:約200g/L)、M1は硝酸プルトニウム・硝酸ウラニル混合溶液(プルトニウム濃度:約120g/L、ウラン濃度:約120g/L)、M2は硝酸プルトニウム・硝酸ウラニル混合溶液(プルトニウム濃度:約85g/L、ウラン濃度:約200g/L)、Uは硝酸ウラニル溶液(ウラン濃度:約50〜360g/L)です。

高濃度のプルトニウムやウランを含む硝酸溶液の酸(水素イオン)濃度は、再処理工程の運転管理や工程内のプルトニウムの加水分解を防止する観点から重要なパラメータです。

従来、高濃度のプルトニウムやウランを含む硝酸溶液の酸濃度の分析は、アルカリ中和−電位差滴定法を適用していました。しかし、この方法は水酸化ナトリウムやフッ化物イオンを含む試薬の添加が必要となり、それが分析廃液となっていました。特に、フッ化物イオンは室温でもステンレス鋼の腐食を促進させることから、廃液処理工程の槽類や配管の腐食が懸念されていました。このような背景から、フッ化物イオンをはじめとする試薬を使用せず、分析時間の短縮が可能な分析方法を調査しました。

そこで着目したのが、溶液の導電率です。導電率とは電流の流れやすさを示すものであり、溶液の液温と溶液に含まれるイオン(電解質)の種類とその濃度に依存し、特に水素イオンの当量電導度は、表8-2に示すように他のイオンに比べて非常に大きく、高感度で測定ができます。また、溶液の導電率は、写真8-1に示す市販の導電率計を改造することなく、容易に測定することができます。

本件は、溶液中を流れる電気量がイオンの濃度に依存する性質を利用しています。しかし、複数のイオンが存在する溶液の場合、溶液の導電率は全てのイオンの導電率の総和となって表されるため、硝酸プルトニウム・硝酸ウラニル混合溶液のようにプルトニウムとウランが高濃度で存在する場合、水素イオンの導電率のみを測定することは困難です。そこで、溶液の導電率に占めるプルトニウム及びウランの導電率を溶液中のプルトニウム及びウランの量で補正することとしました。具体的には、試料の測定温度を一定(25℃)とし、蒸留水で希釈した試料の導電率、プルトニウム及びウラン濃度と従来法により得られた酸濃度との相関を用い、これらをパラメータとして、多変量解析法により得られた相関式から酸濃度を算出する方法を検討しました。その結果、以下に示す良好な結果が得られました。
@図8-7に示すように、本法と従来法との比較分析の結果は、10%以内で良好に一致しました。
A本法の25℃における日間再現精度は1.5%以下であり、良好な精度が得られました。
B本法の分析時間は約5分であり、従来法の1/6に短縮することができました。

以上の結果から、2005年3月よりプルトニウム転換技術開発施設における硝酸プルトニウム溶液等の酸濃度分析として本法の適用を開始しました。また、再処理工程中の硝酸プルトニウム溶液等の酸濃度分析へ本法を適用することが可能です。


●参考文献
北川修ほか, 導電率測定による高濃度のプルトニウム, ウランを含む硝酸溶液の酸濃度の定量, 2006, JAEA-Technology 2006-031, 29p.


| | | | |