12-5 高速炉燃料の実用化を目指した燃料特性の研究

−ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料の熱伝導率評価−

図12-9 熱伝導率の密度依存性

図12-9 熱伝導率の密度依存性

シンボルで示す実験値は密度の低下とともに熱伝導率が低下する傾向にあります。また、実線で示されているMaxwell-Eucken式を用いた計算値は実験値の密度の依存性を良く表しており、Maxwell-Eucken式によって熱伝導率の密度補正が85〜95%TDの範囲で可能であることを示しています。

 

図12-10 熱伝導率のAm含有率依存性

図12-10 熱伝導率のAm含有率依存性

シンボルで示す実験値はAmの含有率の増加とともにわずかに低下する傾向にあります。フォノン伝導モデルによる評価の結果、係数AにAmの影響を考慮することによって実線で示される計算値が実験値を表せることを確認しました。

次世代の核燃料サイクルシステムにおいて、現在の知見で最も実現性が高いとされている原子炉の候補は酸化物燃料を用いたNa冷却高速炉であり、その実用化を目指した研究開発が実施されています。高速炉から熱を取り出す際は、炉の出力を上げるほど多くの熱量を取り出すことができるため、設計において燃料を溶融させずに高い出力で運転ができるように炉や燃料の特性を考慮した評価を行います。これらの特性については信頼性の高いデータを採用することによって、より合理的な設計を行うことができるようになります。燃料の熱伝導率は燃料設計において非常に重要な熱物性値の一つです。

高速炉燃料であるPuとUの混合酸化物(MOX)の熱伝導率はその密度や酸素/金属比(O/M比)等によって変化します。燃料の密度は炉の特性等によって異なり、「もんじゅ」では燃料製造時に燃料の気孔率を制御し、理論密度比を約85%TDとした低密度燃料が使用されています。更に、燃料再処理から炉への装荷までの期間が長期化すると燃料中のPu-241の崩壊によりAmが数%まで蓄積するため、熱伝導率に影響する可能性も考えられます。

本試験では燃料の熱伝導率に関して、Pu含有率約30%のMOX燃料について温度範囲600〜1,500℃における熱伝導率の密度依存性(85〜95%TD)及びAm含有率依存性(0.7〜3%)について評価しました。MOX燃料の熱伝導率における密度依存性について図12-9、Am含有率依存性について図12-10に示します。これらの影響について解析を行った結果、熱伝導率の密度及びAm含有率の影響を理論的に示すことができました。

これまでのMOX燃料の熱伝導率に関してはPu含有率20%以下,密度90%TD以上,O/M比2.00〜1.96の範囲での報告がありますが、今後の高速炉燃料における熱伝導率を評価する上においては十分とはいえず、更にAm含有率依存性についての報告はありませんでした。本試験結果によって密度依存性についてはその範囲を85〜95%TDとし、これまでよりも広い範囲での評価を行い、また、得られた評価式がもんじゅ燃料のような低密度燃料に適用できることを確認しました。Am含有率に関してはこれまでに影響評価がされておらず、本研究において初めて明らかにされました。この結果、熱伝導率に対するAm含有率の影響は低Am含有率領域においてはわずかであることを確認しました。また、現在温度範囲については2,000℃までの測定、O/M比依存性については1.91までの測定と、これらの測定範囲についてもこれまでよりも拡大して熱伝導率の測定を行い、今後の高速炉燃料の特性評価に対応するために総合的な試験を進めています。


●参考文献
Morimoto, K. et al., Thermal Conductivities of (U, Pu, Am)O2 Solid Solutions, Journal of Alloys Compounds, vol.452, issue 1, 2008, p.54-60.


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