1-8 制御された温度ゆらぎを与えて構造材料の強さを探る

−高速炉におけるナトリウム高サイクル熱疲労試験−

図1-20 試験部構造とナトリウム温度変動波形

図1-20 試験部構造とナトリウム温度変動波形

 

図1-21 周波数0.05Hz、16万サイクル試験後における疲労破損状況

図1-21 周波数0.05Hz、16万サイクル試験後における疲労破損状況

試験体の金属組織観察により、き裂の発生寿命と進展挙動を把握し、破損メカニズムの解明と評価法の検証データを取得します。

原子力プラントにおいて温度の異なる流体が混合する領域では、流体の温度ゆらぎにより接液する構造材料に繰り返し熱応力が発生することから、高サイクル熱疲労による破損の可能性を評価する必要があります。これまでに、熱応力は温度ゆらぎの周波数に依存することが明らかにされており、高温構造評価技術の開発において熱応力の評価に周波数効果を取り入れた高サイクル熱疲労評価法が提案されています。そこで、この評価法の妥当性を確認するために、高速炉の冷却材であるナトリウムを用いて温度ゆらぎの周波数特性を精密に制御できる熱疲労ナトリウム試験装置(SPECTRA)を開発し、代表的な構造材料であるSUS304鋼に対して熱疲労試験を実施しました。

SPECTRAは、電磁ポンプにより高温(600℃)と低温(250℃)のナトリウム流量比率を連続的に制御して様々な波形と周波数の温度変動を発生させ、構造材料の試験体にき裂を発生・進展させる熱疲労試験装置です(図1-20)。本装置の特徴としては、(1)周波数をパラメータに正弦波状の温度変動を一定流量下で制御できること、(2)熱応力が複雑に分布しないように軸対象な温度変動を試験体に与えることができること、(3)大小の熱応力を軸方向に分布させて1体の試験体でき裂の発生から進展までのデータを効率良く取得できること、(4)周波数の異なる波形を組み合わせて重畳波の温度変動を発生させることができる等があります。

SPECTRAを用いて周波数を0.05〜0.5Hzの範囲で正弦波状に温度変動させて熱疲労試験を実施しました。試験は、ナトリウム流量を平均150l/minで高温/低温ナトリウムを逆位相で試験体に流入させて合計流量を300l/minに一定に保持しながら、ナトリウム温度を平均425℃、振幅200℃で制御しました。

試験の結果、周波数によって構造材料のき裂発生・進展挙動に違いが現れることが明らかになりました。例えば、周波数0.05Hzでは16万サイクルの繰り返し温度変動を与えたところで試験体の内面から発生したき裂が外面に到達して貫通した(図1-21)のに対して、周波数0.2Hzでは26万サイクルを経過してもき裂は外面まで進展しておらず、両者の疲労寿命に有意な差が生じています。このように温度ゆらぎの振幅が同じであっても、周波数の違いによって構造材料の熱応力が変化して強度に影響を及ぼすことを確認し、解析により予見されていた現象を試験で実証できました。この成果は、高サイクル熱疲労評価法の検証データとして反映されます。

今後は、実際の不規則な温度ゆらぎで生じるランダム変動での特性を評価するため、短周期と長周期を組み合わせた重畳波の試験に移行し、複雑な温度変動が構造材料に与える波形効果を調べる計画です。


●参考文献
Kawasaki, N., Kobayashi, S., Hasebe, S. et al., SPECTRA Thermal Fatigue Tests under Frequency Controlled Fluid Temperature Variation -Transient Temperature Measurement Tests-, Proceedings of 2006 ASME Pressure Vessels and Piping Division Conference (PVP 2006) /International Council on Pressure Vessel Technology (ICPVT11), Vancouver, Canada, 2006, ICPVT11-93548, 8p., in CD-ROM.


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