2-10 地質観察データから岩盤の水理地質構造を推定する

−堆積岩における割れ目調査技術の開発−

図2-23 露頭写真の一例

図2-23 露頭写真の一例

割れ目を観察しやすくするために、重機を用いて人工的に作り出した露頭です。本露頭では、堆積岩(稚内層)中に、層理面に高角な断層と層理面にほぼ平行な断層が発達するのが観察できます。また、写真中央部には層理面に高角な断層が稚内層中の硬質部を約10m左横ずれさせているのが観察できます。地質観察では、これらの割れ目の変質状況や交差関係などを丹念に記載します。

 

図2-24 水みちの概念的な分布図

図2-24 水みちの概念的な分布図

岩盤中には層理面に高角な断層(特に小断層帯)が地下水の主要な水みちとして広く分布していると推定されます。一方、層理面にほぼ平行な断層はその可能性が低いと推定されます。なお、図中に示した大曲断層は本文で触れていませんが、ほかの調査から地下水の主要な水みちであることが推定されています(図中の実線は水みちの可能性が高いもの、破線はその可能性が低いものを示しています)。

高レベル放射性廃棄物の地層処分を行うに当たっては、廃棄物を埋設する周辺岩盤における放射性核種の移動現象を評価するために、岩盤中の地下水流動を解析する必要があります。地下水流動の解析では、岩盤中の透水係数(水の流れやすさ)の空間分布(水理地質構造)を把握する必要があり、特に透水係数の高い部分、つまり地下水の主要な水みちとなっている部分の把握が重要となります。

水理地質構造は、地質観察データや原位置透水試験データに基づいて総合的に推定しますが、地質観察データに基づく地質解釈によって、主要な水みちをある程度まで推定することができれば、効果的な透水試験の実施が可能となり、効率的な水理地質構造の推定が可能となります。

本研究では、幌延地域の割れ目が発達する堆積岩を対象に地質観察を行い(図2-23)、地下水の主要な水みちとなっている割れ目の把握とその分布特性の推定を試みました。

岩盤中の大部分の割れ目は、その方向性と割れ目面の特徴から層理面に高角な断層と層理面にほぼ平行な断層に分類できました。更に、割れ目の変質状況,方向性,分布密度及び交差関係に基づくと、前者の断層(特にこれらの密集部である小断層帯)が地下水の主要な水みちであることが推定できました。この推定は、ボーリング孔での原位置透水試験の結果や掘削中の逸水箇所と整合的であることが確認できます。

また、この層理面に対して高角な断層は、方向性,変位方向及び交差関係から、褶曲形成時に蓄積された残留応力によって隆起後に形成されたものと推定できました。その成因に基づくと同断層が褶曲構造に伴って広く分布することが推定でき、実際に、褶曲周辺の露頭やボーリング孔において同断層を広く認めることができます。

このように、地質観察データから岩盤の水理地質構造をある程度推定することが可能であることが分かりました(図2-24)。今後は、調査の量/品質と推定結果の不確実性の関係について、検討していく予定です。


●参考文献
石井英一ほか, 新第三紀珪質岩における断層の解析事例, 応用地質, vol.47, no.5, 2006, p.280-291.


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